豊洲に移転するのか、築地を再整備するのか―、東京都の「市場のあり方戦略本部」による詰めの協議が始まった。専門家会議や市場問題プロジェクトチームでの検討結果を集約・整理し、残る課題を総点検して小池百合子知事の“総合的な判断”につなげる。6月15日は中央卸売市場会計の持続可能性を検証し、豊洲市場に移転する場合、「経営改善を行いながら築地用地を長期貸し付けすれば、経常収支、資金収支ともに黒字化が可能」とする試算結果を打ち出し、築地市場の活用が鍵になるとの見方を示した。16日も引き続き会合を開き、豊洲市場の課題への対応や築地改修(再整備)案を検証する。
15日の会合では@市場の在り方A11市場全体で見た市場運営の在り方B中央卸売市場会計の持続可能性―の3点を検証した。
市場の在り方については、環境変化とニーズに応える必要があるとし、求められる機能としてトレーサビリティーや衛生管理の徹底(HACCP対応など)、コールドチェーンの構築、効率的な物流などを位置付けた。東京だけでなく日本の基幹市場としての役割を担うことも重要だとした。
市場運営に関しては、長期的展望や市場ごとの経営戦略、適切な新陳代謝、受益と負担のバランスなどに配慮する必要があると指摘。「生鮮食料品などを円滑・安定的に供給するための基幹的インフラとして役割を果たしつつ、経営合理化や消費者利益、公共的役割などのバランスを踏まえた多面的な検討が必要」だとした。
市場会計の持続可能性の検証では、豊洲市場に移転することを前提に、@豊洲移転(現状案)A豊洲移転し、経営改善策を実施B豊洲移転、経営改善に加え、築地市場用地を一般会計に売却C豊洲移転、経営改善に加え、築地市場用地を長期貸し付け―の4パターンで収支を試算。C以外の3ケースはいずれも経常収支が年間130億〜160億円の赤字で、資金収支もショートするとの結果をまとめた。一方、Cについては、経常収支が年間20〜30億円の黒字に転換し、資金収支はいったんショートするものの継続的な地代収入から再度黒字化できると見込んだ。そして、「豊洲移転を行う場合は、築地市場用地をどのように活用していくかが重要」と結論付けた。
提供:建通新聞社