地産地消エネルギー創出による地域活性化へ 東工大AESセンター長「長崎・資質に富んだ県」 地産地消のエネルギー創出による地域活性化に向け、自治体主導の分散型エネルギーシステム構築プロジェクトを支援する『地域プロジェクト推進会議』が長崎で開かれた。同会議の地方開催は初の試み。会議を主催する東京工業大学・先進エネルギー国際研究センター(AESセンター)の柏木孝夫センター長は、自治体内や官民が連携している長崎について「資質に富んだ県」と評価した。
会議では、地域エネルギーの創出に取り組む対馬、五島、雲仙、西海、壱岐の各市の担当者が概要を説明。具体的には▽対馬―公共施設への木質バイオマスボイラーの導入、木質バイオマス発電構想、水素の活用▽五島―陸上風力発電、浮体式洋上風力発電、水素の製造・貯蔵・利活用▽雲仙(島原半島)―バイオマス+耕畜連携、地熱資源の活用▽西海―風力発電ゾーニング計画▽壱岐―風力発電、木質バイオマス導入、バーチャルパワープラント構築実証フィールド、焼酎かすを利用したバイオガスエネルギー活用。
これらの説明を聞いた上でまず、県の産業労働部の吉田憲司海洋・環境産業創造課長が「私どものミッションは、再生可能エネルギーの導入による県内経済の活性化・雇用拡大。そのためトップランナーの意識をしっかり持ち、県が自ら動き、必要な支援を行う」と県の姿勢を示した。さらに、各市の取り組みについて「材料の安定供給や、独立電源の離島での出力抑制などさまざまな課題があった」とした上で、会議の参加企業者に対し「県内各地域の再エネ導入の動きをビジネスチャンスと捉え、力添えをお願いしたい」と求めた。
離島ハンディを強みにトップランナーへ 続いて、AESセンターの金谷年展特任教授が「離島のハンディを逆に強みにしてトップランナーを目指す≠ニいう強い意欲を感じた。再生可能エネルギーを作るだけでなく、食や医療の六次産業化分野、さらには災害時に生かすなど一石何鳥≠ノもしていくことが重要。その結果が、商品・製品の販売や観光、地域活性化にもつながっていく」と、さらなる展開に向けた方向性を示した。
最後に柏木センター長が、▽首長と自治体内部との連携▽県と市町との連携▽官民連携▽推進体制―などを挙げ「これらが上手くいっている資質に富んだ県」と長崎を評価。今後については「補助金を活用し、フィージビリティスタディ(実現可能性調査)からモデルケースまで進め、固定価格制度で電力を系統に売るだけなら誰でもできる。さらに、地域住民に電力を小売りするまで進めてほしい。このビジネスモデルの実現を全面的にバックアップしたい」と話した。
ANAクラウンプラザホテル長崎グラバーヒルの会場には、県や県下の自治体・企業のほか、AESセンターに加盟する全国の企業関係者ら100人近くが集まり、情報・意見の交換も図られた。