6月5日に開かれた東京都議会財政委員会では、財務局による試行を目前に控えた都の入札契約制度改革について鈴木隆道氏(都議会自民党)と松田康将氏(同)、吉倉正美氏(公明党)が質問し、低入札価格調査制度の適用拡大や、予定価格の事後公表によって懸念される不調多発などにどう対応するのか確認した。財務局の五十嵐律契約調整担当部長が、低入札価格調査の対象を年間34件程度と見込んでいることを明らかにするとともに、不調発生の回避のため、設計図書など発注図書の詳細化や適切な見積期間の設定に取り組む考えを示した。
鈴木氏らは、建設業団体の多くが低入札価格調査制度の拡大によるダンピング受注の増加を危惧していると指摘。工事品質の低下や中小企業の担い手確保の支障にならないよう慎重な扱いが必要だと訴えた。
これに対し五十嵐部長は「業界団体からダンピング増加を危惧する声が上がっていることは認識しているが、都のダンピング防止に向けた考え方は変わっていない」と説明。6月からの試行に当たり「失格基準の創設や社会保険未加入対策の強化など低入札価格調査を厳格化する。こうした取り組みを通じ、改正品確法で求められている将来にわたる公共工事の品質確保と、中長期的な担い手の確保につなげる」との考えを示した。
低入札価格調査の対象となりうる案件については「2015年度の契約実績を基に試算したところ年間34件程度になるのではないか」との見込みを明らかにし、「低入札価格調査の厳格化に当たっては、特別重点調査基準の数値的失格基準への変更や、工事成績失格基準の新設など、調査基準に該当した場合に失格とする仕組みを取り入れることで、受発注者双方の負担を軽減する」と述べた。
工事成績の失格基準については「工事成績評定に65点未満のものがあった場合に失格とする」と説明。基準設定に当たって全庁の工事成績評定点の統計を確認したところ、その平均点が約69点だったことを明かし、「下請け事業者へのしわ寄せ、工事の品質などへの影響を最小限に抑えるため、この平均点を基に失格基準を設定した」と答えた。
低価格での応札が増えて事業者が適切な利潤を得られなければ、中長期的な人材育成に支障をきたすことも懸念されるとの指摘に対しては、「建設業の持続的な発展のためには担い手となる人材の確保が何よりも重要。低入札価格調査制度の実施に当たり、工事の下請けとして参入する中小零細企業に不当なしわ寄せが生じないよう、社会保険未加入者対策を行い、不適切な場合には失格とする」と述べた。
予定価格の事後公表を起因とした不調の発生と、それによる都の公共事業の遅れに対しては、「事業の遅延による都民サービスの低下につながらないよう、不調発生はできる限り避けなければならない」と述べた上で、「事業者が適切に見積もりができるよう、設計図書など発注図書の詳細化や、適切な見積期間の設定に取り組むとともに、発注当初から市場価格とのギャップのない適正な予定価格の設定、適正な工期・工程の設定、発注の平準化などを引き続き進め、より多くの事業者が参加しやすい環境を整備することで不調を回避していきたい」と答えた。
提供:建通新聞社