揖斐川町、大野町、池田町の揖斐郡3町を所管する岐阜県揖斐土木事務所。人口は3町合わせて約6万8000人。管内の面積は約876平方`で、そのうち約88%を山林が占める。国道は303号と417号の2路線、主要地方道の岐阜関ケ原線など5路線、一般県道21路線の合計28路線の今後の整備などを4月に就任した坂口達也所長に聞いた。(聞き手は岐阜支局=村上周平)
――管内の課題について伺いたい。
「東海環状自動車道西回りルートの整備が進められる中、大垣西インターチェンジ(IC)から大野神戸IC(仮称)間は19年度の開通予定が公表されている。このため都市計画道路大野揖斐川線、主要地方道岐阜巣南大野線、国道417号など揖斐郡各地から大野神戸ICへのアクセス道路の整備が喫緊の課題だ」
「また管内の大部分が急峻(きゅうしゅん)で脆弱(ぜいじゃく)な地形のため、落石対策や東海地震などの大地震に備えた耐震対策などの防災工事が必要不可欠だ。その他、河川改修や砂防、急傾斜地崩壊対策などのハード対策と豪雨時の適切かつ迅速な住民避難につながるソフト対策を併せた『総合的な防災・減災対策』を推進する必要がある」
――整備方針を伺いたい。
「管内の課題を解決し魅力ある地域づくりに貢献するため、三つの目標を定める。一つ目は「活力ある地域づくり」のため、県経済の発展や地域の活性化に不可欠な幹線道路と地域を支える道路整備を進める。二つ目は「安心して暮らせる地域づくり」のため、砂防、急傾斜地崩壊対策、河川改修、道路防災など防災・減災対策事業を進める。三つ目は「県民協働による地域づくり」のため、『社会基盤メンテナンスサポーター制度』や『ぎふ・ロード・プレーヤー制度』『フィッシュウェイサポーター制度』など、地域の皆さんと連携した維持活動を進め、地域から愛着を持たれる土木施設を目指すとともに維持管理コストの削減を図る。さらにICTを活用し、社会資本の整備・維持管理の高度化に対応していきたい」
――17年度の主な道路事業はどうか。
「東海環状自動車道ICへのアクセス道路整備として、岐阜巣南大野線の下磯〜麻生区間は、麻生交差点改良を優先的に進めている。17年度は埋蔵文化財の発掘調査を実施するとともに、引き続き用地補償を進める。麻生交差点から東西に延びる都市計画道路大野揖斐川線は、大野町工区で用地補償を進めており完了した区間から随時工事を実施している。また揖斐川町工区では、早期の暫定供用に向けて工事を推進し、残る用地買収を継続する。その他、本庄揖斐川線の福島〜長良区間は用地補償を継続する」
「国道303号の西横山バイパス(BP)整備は、揖斐川町東横山〜坂内坂本区間で幅員狭小部や、落石・土砂流出の懸念箇所を解消するため、14年度から事業着手している。BP区間内に計画されている『鉄嶺(くろがね)トンネル(仮称)』本体工事は16度末に工事発注しており、早期のトンネル掘削開始に向けた準備を進めている」
「国道417号では、13年度から岡島橋〜脛永橋間の幅員狭小区間の和田工区で歩道設置を含む道路拡幅事業に着手しており、17年度も用地補償を継続する。09年度から事業着手した横山・鶴見BPでは、早期の完成を目指し『横山トンネル』(仮称)の舗装工事や防災・照明設備、『川尻桟道橋(仮称)』の橋梁上部工などを進める。その他、国道417号は転石や浮石が多数あり、過去には法面崩壊が発生していることから揖斐川町西横山地内で引き続き落石対策の防災工事を進める」
「道の駅では、県と大野町で『道の駅パレットピアおおの』の整備を進めている。17年度はアクセス道路の岐阜関ケ原線および岐阜巣南大野線の交差点拡幅工事を鋭意進める。また、『道の駅星のふる里ふじはし』は、揖斐川町の地域防災計画の避難所に指定されており、15年度から災害時に利用できる貯水槽や非常用電力確保のための発電装置の設置、トイレの洋式化などを進めている」
「その他の道路整備では、揖斐川谷汲山線三輪工区の歩道設置などの安全対策、国道303号の八草トンネルの施設整備、緊急輸送道路や孤立対策のため揖斐高原線の新穂谷橋の耐震対策、国道303号の鎌曽橋の補修などを行う。また災害復旧事業として国道417号の櫨原地滑り対策工事を継続する」
――河川、砂防事業はどうか。
「河川事業では、揖斐川町上南方地区の桂川で浸水被害軽減のため県単河川局部改良事業を実施しており、17年度も引き続き掘削護岸工事を推進する」
「通常砂防事業では、池田町片山地内の金地谷で護岸工の整備を進める他、揖斐川町谷汲深坂地内の北洞谷と揖斐川町春日美束地内の古田谷で堰堤工の新設に向け用地補償を進める。その他、寺谷で護岸工事を進める」
「急傾斜地崩壊対策事業は、揖斐川町北方地内の西平工区で擁壁工などの法面対策工事を進める。また揖斐川町乙原地内の乙原工区では、用地補償と工事着手を、揖斐川町春日六合地内の樫工区では用地補償を進める」
「雪崩対策事業として揖斐川町春日香六地内の正金地で、引き続き雪崩予防柵の工事を進める」
――建設業界へメッセージを。
「建設業は、社会資本施設の整備、維持管理を通して地域を創り、守っていくうえで欠くことのできない存在だ。当地域においては地域における主要な産業として雇用の場でもあり、地域の安全・安心の確保、地域づくりなどにとっても必要不可欠だと考えている。
「豪雨などの緊急時に備えた体制の確保、災害時には昼夜を問わない迅速な対応、特に当地域は山間部を中心に雪が多い地域でもあり冬季の除雪など、さまざまな状況で協力をいただき感謝している。またボランティア活動にも積極的に取り組んでいただき、当地域の安全・安心・便利な生活が確保されている」
「このような建設業のやりがい、意義などを社会に積極的に発信し、次世代を担う若手技術者の確保や育成に取り組むと同時に、今後も安全、安心、便利な地域づくりにご協力をお願いしたい」
提供:
建通新聞社(2017/06/02)