岐阜県古川土木事務所は、県の最北部に位置し、飛騨市と高山市の一部(国府町、上宝町、奥飛騨温泉郷)を管轄している。人口は減少傾向で典型的な過疎地域だが、その中で地域住民の安全・安心な暮らしの確保と活力ある地域づくりのため、強靱(きょうじん)な社会資本の整備が求められている。交通網としては、JR高山本線と、国道41号(直轄)、158号、360号、471号を幹線として、これに主要地方道5路線、一般県道13路線で構成されており、地域内の生活・交通・物流等を支えている。また、管内の河川は30河川で、全て神通川水系の1級河川となっている。小野弘康所長に17年度事業計画を聞いた。(聞き手は岐阜支局=村松衡)
――管内の現状と課題について伺いたい。
「高速交通網の整備による交通事情の変化に伴い、当管内の各地域が岐阜県の『北の玄関口』として、また、飛騨の観光地として今後発展していくことが期待され、北陸新幹線富山駅と富山空港に直結し国道41号のバイパス(BP)機能を果たす国道360号や、飛騨市街地と東海北陸自動車道飛騨清見インターチェンジとを最短で結ぶ主要地方道古川清見線などの管内の道路網の早期整備が急務となっている」
「一方、管内の道路の多くが急峻(きゅうしゅん)な山地と河川沿いを走り、地域を行き来するには峠越えの道路も多いなど、降雨等による落石、山腹崩壊や路側決壊など、災害を受けやすい環境にあるため、防災・減災対策や冬季交通の安全確保を早急に進める必要がある。また、04年の台風23号による豪雨災害、14年の豪雨災害等、短期的・局地的な集中豪雨による災害が頻発しているため、これに対応した管内河川の整備水準の向上や土砂災害の軽減対策をハードとソフト両面から進める必要がある」
――17年度の予算規模、編成や基本方針について伺いたい。
「当初予算の総事業費は約19億5000万円で、前年度の当初予算比で1・07%増額となっている。事業別にみると、道路建設事業が約7億4000万円、道路維持事業が約8億3000万円、河川事業が約1億7000万円、砂防事業が約1億9000万円となっている。限られた予算の中ではあるが、引き続き『安全で安心な活力ある地域づくり』を着実に進めていく方針だ。また、本年度も上半期に80%以上の工事発注を進めていく」
――17年度主要事業を伺いたい。道路建設事業はどうか。
「管内の特徴として、山岳道路が多いうえに、道路改良率(幅員5・5b以上)は50・3%と岐阜県の平均65・4%を下回り、道路インフラの整備が遅れているのが現状だ」
「17年度は、主要地方道古川清見線平岩バイパス工区(飛騨市古川町平岩)では、(仮称)平岩1号橋(橋長149b)を含む約1・3`区間を完成させ、年度内の供用開始を目標に現在工事を進めている」
「国道360号種蔵・打保BP(飛騨市宮川町塩屋)では、16年度に成手トンネルを含む約0・55`区間を部分供用したところで、本年度は(仮称)宮川2号トンネル(延長946b)のトンネル本体工事を発注し整備を推進する予定だ。また、主要地方道神岡河合線杉崎・太江BP2工区(飛騨市古川町細江)では、用地買収に向けた調査を進め、主要地方道国府見座線八日町工区(高山市国府町八日町)では、道路改良工事を継続実施する予定だ」
――道路維持事業はどうか。
「防災対策としては、緊急輸送道路の雨量規制区間内である国道360号(飛騨市宮川町)の落石防止事業を継続して行うとともに、国道471号笹島トンネル(高山市奥飛騨温泉郷)ではトンネル補修工事として、トンネル照明をナトリウム灯からLED照明に更新する予定だ」
「また、歩道整備では一般県道谷高山線(飛騨市古川町上野)で、通学路交通安全プログラムに基づいた歩道設置工事を進めるほか、一般県道鼠餅古川線(飛騨市古川町上気多)では、新たに歩道整備に向けた用地買収に着手する。また、雪寒事業として、主要地方道国府見座線(高山市上宝町蔵柱)で、冬季の交通の安全確保のため堆雪幅を確保する工事を進めるとともに、国道471号(高山市奥飛騨温泉郷)で融雪施設の設置工事に着手する。その他、計画的に橋梁、トンネル等の点検を進める」
――河川事業はどうか。
「一 級河川宮川(飛騨市古川町谷付近)では、鷹狩橋上流左岸の引堤工事に向けた用地補償に着手する予定だ」
――砂防事業はどうか。
「砂防事業では、岡前谷(飛騨市古川町袈裟丸)や出しケ谷(飛騨市河合町稲越)などで堰堤工の工事を継続する。一本栃洞(飛騨市古川町下気多)では工事に向けた用地補償に着手する他、芦ケ洞(飛騨市古川町上野)、牧戸谷(飛騨市宮川町牧戸)、急傾斜地崩壊対策事業の瓜巣4(高山市国府町瓜巣)では、用地測量などを実施する予定だ」
――建設業界へのメッセージをお願いしたい。
「当管内においては、昨年度は大きな災害等は無かったものの、14年度は04年度の台風23号による豪雨災害以来の大きな災害が発生した。また、冬季には降雪による倒木などで一部の県道の通行止めが発生した。こうした災害発生時の応急復旧活動や冬季交通確保のための除雪など、建設業界の協力は不可欠だ」
「一方、建設業界でも就労者の高齢化が進み、将来の担い手不足が懸念されており、建設業の労働環境の改善や生産性の向上など、中長期的な担い手の育成と確保が必要となる。県としても本年度から『週休2日制』、『建設現場の環境改善』、『ICT活用』の各モデル工事を実施する。当地域の皆さんにも積極的に参加してほしい。また、建設工事における事故防止対策にも一層の努力をお願いしたい」
「建設業界は地域防災力の要として重要な担い手であるとともに、地域の貴重な雇用の受け皿としても極めて重要な産業だ。地元に密着した住民の安全・安心を守る信頼される業界として災害時の応援協力や除雪、ボランティア活動など一層の協力をお願いしたい」
提供:
建通新聞社(2017/05/31)