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建通新聞社(中部)
2017/05/30

【岐阜】県2017年度事業展望 高山土木事務所

 岐阜県高山土木事務所の管内は県北部に位置し、高山市(国府町、上宝町と奥飛騨温泉郷の区域を除く)と大野郡白川村の1市1村からなり、面積は県土の18・5%を占める山岳地域。人口は約8万人(県全体の約4%)で、人口密度は約41人/平方`と低く、人口動態は減少傾向にある。今年で2年目となる鈴木金治所長に2017年度の事業計画などを聞いた。
 (聞き手は岐阜支局=村松衡)高山土木事業展望 鈴木所長
 ――高山土木事務所の現状と課題は。
 「東海北陸自動車道の全線開通によって高規格幹線道路ネットワークが確立し、飛騨地域では観光交流などの活性化が図られつつある。一方、一般道においても順次バイパスや拡幅工事などにより安全で快適な道路を整備しつつあるものの、大型車両の擦れ違いが困難な橋梁やトンネル、異常気象時や冬季に通行が制限される区間があり、さらに積雪も多く、雪崩による通行止めも発生している。このように、解決すべき課題がまだ多く残されており、引き続き道路整備を進める必要がある」
 「また、管内は山岳地形を呈し、急峻(きゅうしゅん)な山地や急流河川が多いことから、大雨が降れば、すぐに河川が増水し洪水が発生するとともに山地崩壊に伴う土砂災害が発生しやすい地域である。近年でも、集中豪雨による浸水被害や土砂災害が発生していることから、ハード・ソフト両面からの対策が必要である」
 ――17年度の予算規模などについて。
 「17年度当初予算は公共・県単合わせて約28億円で、全体としては前年度を1割ほど上回る予算配分となった。ただし、15年度に比べると1割ほど少ない状況である。当初予算では工事ストック確保のための設計委託や事業用地確保を進めつつ、上半期80%以上の工事発注を目指すとともに、補正予算があれば積極的に活用したいと考えている」
 ――基本方針について。
 「県土整備部では、『ひとやしごとを岐阜に呼び込むための社会資本の整備』『強靱(きょうじん)な県土づくりの推進』『自然と共生した県土づくりの推進』『社会資本を支えるパートナーの育成・支援』を政策の4本柱としている。これを基に地域活性化や地域の安全・安心につながる幹線道路の整備や、災害から人命を保護し、県土の保全を図るため、ハード対策とソフト対策を組み合わせた治水対策や土砂災害防止対策など、地域特性を踏まえた防災・減災対策の強化を図るとともに社会資本の戦略的な維持管理を推進していく。一方、災害時の備蓄拠点を整備し、大規模災害に備える。また、技術力の維持向上を図るための人材(ME)の育成や、同様の課題を抱える市村に対する社会資本メンテナンスの技術的支援も行っていく」
 ――主な道路整備事業について。
 「幹線道路ネットワークの整備や、安全・安心に暮らせる道路の整備を基本方針として事業を進めていく。17年度の主な道路建設事業としては、国道156号の白川村福島工区および牧工区、国道361号の高山市高根町中之宿工区などの改良工事を推進する。このうち、国道156号福島工区の福島第一トンネルについては、本年度本体工事発注を目指す。また、都市計画道路花里本母線の高山駅前の道路拡幅に着手する」
 ――道路の維持管理について。
 「管内には雨量規制区間が10路線11区間113・3`、雪崩規制区間が1路線14・9`あり、第1次緊急輸送道路を含めた県土強靱化ネットワーク確保のためにはこれらの解消が必要で、防災・防雪対策を引き続き進める必要がある。また、道路施設については先日開通した高根トンネルを含め、トンネルが37カ所、15b以上の橋梁が208橋あることから、計画的なメンテナンスも必要となっている。交通安全事業としては、14年度に市村教育委員会が警察などの関係機関とともに策定した『通学路交通安全プログラム』に基づき通学路の歩道整備などを進める。17年度の主な道路維持事業としては、国道156号の白川村福島地内の雪崩対策、県道奈川野麦高根線と白山公園線の防災工事、国道361号の高山市高根町の船渡橋耐震補強工事、県道岩井高山停車場線高山市岩井町内の歩道整備などを推進する」
 ――河川事業について。
 「17年度の主な河川整備としては、近年多発している浸水被害を解消するため、苔川の河道拡幅のための用地買収、江名子川の下流域での河床掘削および上流域での調整池の実施に向けた各種調査を進める。ソフト対策としては、小学校の総合学習の時間を利用して河川の環境教育を進めるとともに、防災教育などによる地域住民の防災意識の向上も図る」
 ――砂防事業、急傾斜地崩壊対策事業について。
 「岐阜県では八山系砂防総合計画に基づき土砂災害対策を推進しており、災害時要配慮者関連施設や指定避難所を保全する箇所から重点的に土砂対策事業を進めている。17年度の主な土石流対策としては、高山市越後町の越後洞砂防堰堤、高山市清見町の堂ケ洞上砂防堰堤の他2カ所で砂防事業を進める。また急傾斜地崩壊対策としては、高山市清見町の山黒地区、高山市江名子町の荏名地区の他2カ所で事業を進める」
 「ソフト対策としては、土砂災害警戒区域および特別警戒区域の指定について15年度に完了したことから、16年度より2順目の基礎調査を進めており、17年度も引き続き基礎調査を行う。また、土砂災害防災訓練を実施することにより、市村と連携して緊急時の体制を確認し、地域住民の防災意識のさらなる向上を図る」
 ――建設業界へのメッセージを。
 「建設業は社会資本整備の担い手であるとともに、災害や除雪時には最前線で尽力されるなど、地域の安全・安心を支える重要なパートナーである。今後とも関係を維持し、より強固なものにしていきたい。また、近い将来、担い手不足が懸念され、人材確保が重要な課題となっていることから、ICTの活用や現場の環境改善など県としてもさまざまなモデル工事に取り組んでいくので、業界としてもこれまで以上の努力をお願いしたい。また、安心して働ける職場とするためには現場事故を無くすことが重要である。受発注者が連携して安全対策に取り組んでいきたい」

提供:建通新聞社(2017/05/30)