3月の町長選で新人との一騎打ちを制し、4期目の町政運営がスタートした杉本栄蔵氏。今後、選挙戦で争点になっていた統合庁舎の検討も本格化する。「地元との対話を重ねながら、スピード感を持って進める」と話す杉本氏に町づくりの展望を聞いた。
統合庁舎整備を巡っては、3年前に住民代表らで構成された庁舎整備検討委員会が旧鹿西中校舎を増改築して本庁舎とする答申書を町側に提出。町はこの答申を基に計画を進める予定としていたが、その後、町議会特別委で方向性が決まらず、今まで事業化できない状況が続いている。
「そうこうしているうちに、先の熊本地震の発生を受けて国が庁舎整備への財政支援を打ち出した。もう一度答申を含め、鳥屋庁舎を活用した場合や、新たに建設すると事業費がどれだけになるかを皆さんに示し、早期に決めていきたい」と力を込める。
「鹿島庁舎は一番古く、100%壊さないといけない。防災の観点からも喫緊の課題であると認識している」と話し、「この任期4年間で完成させたい」との目標を掲げる。今後は、議会の了承を得ることはもちろん、住民の意見を聞きながら、町の将来にとって最も望ましい道すじを見つけていく。
定住促進の施策では、分譲宅地ニュータウン良川(40区画)が完売したことから、新たな受け皿整備を計画。「各地区ごとに5、6区画程度のミニ宅地を開発し、地域のにぎわい創出、活性化につなげたい」と話す。6月補正予算案に関連事業費を計上する方向で調整しており、未利用地の活用を視野に入れ場所の選定などを具体化させる。並行して老朽化した町営住宅の建て替えも検討していく。
このほか、今後の4年間では「遊休施設を活用した歴史資料館の整備」も構想している。「以前から温めてきた計画。町の歴史・文化を広く発信していきたい」
さらに、旧鹿西地区の重要伝統的建造物群保存地区への選定を目指している。「これから文化庁への申請準備を進める」と話し、『あずま建ち』の古民家が50軒ほど建ち並ぶエリアを後世に残したいという。「(重伝建は)加賀、白山、金沢、輪島市にはあるが、中能登地域にはないので、ぜひとも選ばれるようにしたい」と力説する。
企業誘致では、ティーバッグやコーヒーフィルターなどの製造を手掛ける山中産業(京都)が昨年、黒氏で能登工場の操業を開始した。今年度は、バイテックホールディングス(東京)の関連企業が植物工場を瀬戸に建設する。「このほかにも引き合いがいくつかある。具体的な話はこれからだが、何とか一つでも実現できれば」と述べ、地域経済の活性化へ期待を寄せる。
先月16日、生涯学習センター「ラピア鹿島」で、バリアフリーの先進エリア構築へ向け、全国の関係者らと協力して『障害攻略課』を発足させた。「建物も心も日本一やさしい町づくりを目指す」と未来を見据える。
すぎもと・えいぞう
1941年生まれ、75歳。旧鹿西町議4期、県議2期を務め、05年に行われた初代中能登町長選で初当選した。県町長会長、県砂防協会長など。