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建通新聞社(中部)
2017/05/15

【岐阜】県2017年度事業展望 郡上土木事務所

 岐阜県の北西部に位置し、豊富な観光資源を持つ郡上市を管轄する岐阜県郡上土木事務所。管内の総面積1030平方`bのうち約9割が山林で、急峻(きゅうしゅん)な山地、流れが速い渓流など高低差の激しい地形が多い。近年頻発する豪雨、洪水などの災害対策が急務となっている。観光資源の開発や森林資源の活用などによる産業振興のため、管内を走る国道156号や国道256号などの幹線道路を中心とした道路整備に対する期待は大きい。また、昨年9月28日には内ケ谷ダムの本体工事に着手するなど注目が集まっている中、飯島昭憲所長に2017年度の事業計画などを聞いた。(聞き手は岐阜支局=岡本彰)郡上・飯島所長
――道路建設事業について。
 「管内の道路改良率は約55%と県内平均の約65%と比べ、まだまだ低い。こうした中、主要地方道金山明宝線、旧明宝村の小川地区と畑佐地区を結ぶ総延長3380bのバイパス道路の整備を進めている。小川峠に計画している延長約1650bの『めいほうトンネル(仮称)』のうち、第1期工事延長約850bが16年度末に完了した。この他にも、八幡町の国道256号の宇留良工区や県道寒水八幡線の初音工区、高鷲町では県道惣則高鷲線の寺会津工区、美並町では県道鹿倉白山線の白山工区など、管内各所の道路整備について早期供用を目指し、鋭意工事を進めているところだ」
――次に、道路維持管理事業はどのように進めるか。
 「16年度までに緊急輸送道路の橋梁耐震対策を順次進めてきた。国道472号明方大橋の橋脚補強が今年の3月に完成し、計画を2年前倒して、緊急輸送道路の耐震対策が必要な86橋全てについて対策が完了した。今後は、橋梁長寿命化修繕計画に基づいて点検・補修を実施していく。道路災害防除では、14年度に策定した『県土強靭化計画』に基づいて、国道256号が通る八幡町旭地区などは、南海トラフ巨大地震や内陸型地震などで震度6弱以上が想定されるため、落石対策を行う。この他、通学路の安全対策として国道156号の白鳥町二日町他5カ所の歩道整備を進めていく」
――洪水や土砂災害への対策はどうか。
 「長良川で04年の台風23号により浸水被害が出た美並町木尾地区、深戸地区で長良川の広域河川改修で進めている。現在は、用地買収や築堤工事を順次進めている。土砂災害対策としては、本年度から新たに大和町徳永地区の洞ノ口谷工区の砂防事業に着手し、八幡町小野の高垣洞などの継続箇所と合わせて5カ所で堰堤工などを行う。急傾斜地崩壊対策は、本年度から新たに八幡町那比地区の森2工区に着手し、継続箇所と合わせて5カ所で擁壁工などを実施する。またソフト対策では、土砂災害防止法に基づき、土石流や急傾斜、地滑りについて、土砂災害警戒区域1516カ所および特別警戒区域1429カ所の指定を13年度までに完了した。さらに15年度から19年度までの5年間の完了を目標に、地形や土地の利用状況の変化を考慮した基礎調査を行い区域指定を見直す。本年度は、指定に向けた地元説明会や基礎調査を順次行う。14年8月の豪雨では、県内で甚大な被害が発生し、郡上管内でも、白鳥町を中心に土木施設の災害が発生した。被災箇所の復旧を鋭意進めた結果、16年7月末までに道路が8件で約1億円、河川が22件で約12億円、砂防が8件で約2億円を要し復旧が完了した。16年度の災害は、河川災7件、砂防災3件、道路災2件で合計2億4000万円の採択を受け、現在、鋭意工事を進めている。16年度補正予算の災害時応急対策用資機材備蓄拠点の整備については、郡上総合庁舎グラウンドを活用して工事しており、8月に完了する予定だ」
――清流の国ぎふを目標にした河川環境整備はどうか。
 「郡上市大和町地内の万場橋から西河橋までの長良川約3・9`の区間を、8カ年で09年度から2億2000万円をかけて整備し、魚類などの生物生息環境に配慮した川床低下対策が完成した。本年度は、その上流部の川床低下対策について、地元代表者などの意見を聞きながら計画を立案していく」
――内ケ谷治水ダム建設事業の状況はどうか。
 「内ケ谷治水ダムは、堤高84・2b、堤頂長270b、堤体積約33万立方b、重力式コンクリートダムで、有効貯水量910万dとなり、岐阜県が建設・管理するダムでは最大となる。1983年に建設採択され、これまでに工事用道路や付け替え道路の整備を進めてきた。15年度末には、本体工事契約を締結し、着工しており、23年の完成に向け、本年度も引き続き掘削工事を進めている。同時にコンクリート打設の準備としてコンクリート製造設備や骨材製造設備などの設置を進める。他にもダム本体掘削影響法面の保護やダム本体放流設備、複数の工事用道路などを予定している。限られたエリアの中で複数の工事が集中するため事故防止の安全対策や、河川および動植物などへの環境対策を講じて工事の進捗を図る」
――地元建設業に期待することは。
 「災害時や冬季の除雪など、緊急時に迅速かつ臨機応変に対応してもらっている。特に除雪に関して今シーズンは除雪費が平年の倍近くの約5億5000万円となり、地元建設業の方には昼夜を問わず除雪作業に取り組んでもらった。地域を支える建設業の皆さんには非常に感謝している。本年度は、建設業の人材育成と生産性向上が課題となっており、ICTモデル、週休2日制モデル、建設現場の環境改善モデルの各モデル工事を新規試行する予定であり、協力をお願いする。また、現場事故が15年度4件、16年度に6件と増加傾向にある。今年こそ業界の皆さんと共に安全点検などの取り組みに力を入れ、事故の無い1年としてほしい」

提供:建通新聞社(2017/05/15)