日本工業経済新聞社(群馬)
2017/05/10
【群馬】上電沿線市連絡協議会がLRT可能性調査結果示す
前橋、桐生、みどりの3市で構成する上電沿線市連絡協議会は、2016年度に実施した上毛線LRT化可能性調査結果を明らかにした。導入検討パターンとしてJR前橋駅を起点に中央前橋駅まで、大胡駅まで、JR桐生駅までの3つを設定、概算事業費を118億円から最大で239億円と算出した。また、LRTの導入空間確保や、上毛電鉄区間へのLRT乗り入れの設備整備、さらに、運営経費から需要動向など課題も洗い出しており、沿線地域の持続可能なまちづくりと合わせた長期的、総合的な視点から協議を行う必要があるとしている。
導入検討のパターンとして、導入区間、運転本数から6パターンで検討した。
導入区間は◇JR前橋駅〜中央前橋駅(1km)◇JR前橋駅〜大胡駅(9・3km)◇JR前橋駅〜JR桐生駅(26・7km)−の3パターン。新設する軌道区間は前橋駅〜中央前橋駅と西桐生駅〜桐生駅間(0・3km)。前橋駅〜中央前橋駅区間には本町2丁目5差路付近に中間の停留所を想定している。
運転本数は、現在の上毛電鉄の輸送能力を考慮(中央前橋〜大胡駅・3本/時、大胡駅〜西桐生・2・5本/時)、大胡駅までは1時間にお3〜5本、大胡駅から桐生駅までは1時間に2・5本と設定した。
概算事業費は、導入空間整備も考慮した上で算出しており最小は前橋駅〜中央前橋駅を導入区間に運行本数をピーク時に3本/時とした場合で118億円、最大は整備区間が最も長くなる前橋駅〜桐生駅で上毛電鉄区間も全てLRT対応させ、運行本数をピーク時5本/時とした場合で239億円(表参照)。算出にあたっては、LRTを新設する区間での導入空間確保での道路拡幅は見込んだが、埋設物の移設や駅前広場整備関連工事などは含めていない。
課題にあがるのは、LRTを道路内に導入するための空間確保と上毛電鉄区間の改良など。
導入空間については、前橋駅〜中央前橋駅は駅前通りと八展通りをルートとしている。駅前通り区間は現在、往復6車線道路(全幅36m)となっており、幅員8・2mの並木歩道への影響を最小限とするためには4車線に削減し道路中央部に軌道(3m)を敷き、ゼブラゾーンを軌道両側に2・75mずつ配置するイメージ。八展通りは現在の車線数を維持する場合は拡幅を行う必要があり、地域の合意形成や事業の長期化が懸念される。
西桐生駅〜桐生駅は都市計画道路3・6・29区間とし、現在の道路幅員11m(交差点部22m)では、安全性や通行量確保に課題が多く、道路拡幅が必要となるため地域の合意形成や事業の長期化が懸念される。
LRTが上毛電鉄区間に乗り入れる場合、使用している直流1500Vとは異なるため、独立した変電所や変圧が必要。上毛電鉄の車両も直流600V、1500Vの復電圧対応に迫られる。
さらに、乗り入れた場合は各駅の低床ホームの整備や完全導入までの混用運行を行う場合の駅設置方法などの課題がある。中央前橋駅も広瀬川橋梁部に軌道を整備することが想定され、構造的な確認が課題。前橋駅〜中央前橋駅間のみ導入とした場合でも同区間内で独立した車両基地の確保が必要。乗り入れた場合でも大胡駅車両基地の改修が必須となる。中央前橋駅には1500V、600V間のデッドセクションも必要となる。
運営経費の試算は、運営主体を上毛電鉄が新設、既設区間の運営する場合を想定して行った。導入区間、運行本数により異なるが、最小で5・53億円、最大は7・01億円とした。
必要需要量については、維持費に対する公的支援(1・8億円)を想定し、運営経費を基に試算。採算性確保のため必要な需要は、1日あたり最小で5300人、最大で7400人となった。2015年度の利用者数が1日4310人となっていることから、大幅な利用者の増加が必要となる。
これら基礎的な調査から、導入空間、低床ホームなどの設備や費用対効果など多くの課題が確認された。さらに今後の需要推計からも利用者数の減少が続く見通しから、上毛電鉄の運行継続にあたっては、老朽化した車両の更新を含めた多くの設備更新が必須となっている。
また、鉄軌道をネットワーク化した場合の利用者増の可能性、沿線地域の活性化によるまち全体の資産価値工場、費用対効果では測れない波及効果なども考慮しながら、駅周辺の人口維持など沿線土地利用のあり方、まちづくり施策などの検討が必要となる。
今後は、社会情勢の変化、交通用の変化を見極めながら、コスト縮減策や上毛線を継続運行した場合との比較検討を行うとともに、赤城南麓という広域的な幹線公共交通としてのあり方を見据え協議を進める。
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近隣県でLRT導入を計画している自治体に埼玉県さいたま市がある。JR大宮駅から、さいたま新都心を経て、埼玉スタジアム2002がある浦和美園駅を結ぶ、東西交通大宮ルートと呼ばれる路線。導入空間の確保はじめ整備コストの課題があるが、採算性が最も大きな課題とされている。沿線地域開発による定住人口の増加と交流人口の増加を図ることで採算性向上を目指している。東京都心部での鉄道整備は、オリンピック対応など必要に迫られ順次進むが、都心以外では、需要増加、採算性向上をキーワードに、事業化を図ろうと沿線自治体が力を入れている。