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建設新聞社(長崎)
2017/04/17

【長崎】雲仙で無人化施工のオペレーター育成

雲仙・普賢岳 警戒区域内で施工のフジタ・三青JV
   育成プログラム作成し全国の災害復旧に対応へ無人化施工が進む現地

 無人化施工による防災対策工事が進む雲仙・普賢岳の警戒区域内で、新たな動きが進んでいる。県島原振興局発注の「雲仙地区地域防災対策総合治山工事」を施工するフジタ・三青JVでは、現場の作業を通じた無人化施工のオペレーターの育成を、県内在住者を対象に実施。最終的には、育成プログラムを作成して全国展開することで、頻発する自然災害などの応急復旧に対応可能な人材の確保・育成につなげたい考えだ。
 県による無人化施工は、国の砂防事業が進むエリア上流の警戒区域内で1998年度からスタート。これまでに赤松谷本流で14基の堰堤工・谷止工を完了。2015年度からは、支流の極楽谷・炭酸水谷で新たに3基の治山ダム(5号〜7号谷止工)の整備に着手した。
 フジタ・三青JVが施工しているのは5号と6号谷止工の整備で、昨年11月から現場作業に入った。工期は5月末。工事は、遠隔操作による無人化施工で土砂による型枠を設置した後にRCCコンクリートを打設して締め固める。その後、土砂型枠をさらに積み上げてRCCコンクリートを再度打設。この作業を何層も繰り返して治山ダム(計9010立法b)を形成する。遠隔操作室内
 この作業をたった5人のオペレーターで実施。しかもこのうちベテランは2人のみ。「これまでの経験上、本来ならあと二人はいた方が良い作業量だったので、取り掛かり当初は正直心配だった」(現場代理人の三鬼尚臣氏)。ただ、無人化施工のオペレーターの高齢化など、技術・技能の継承が大きな課題となる中、若手、しかも地元の人材育成にチャレンジすることにした。
 人材の育成・教育≠フ面からすると、無人化施工はメリットがあった。なぜなら「普通の重機はベテランの操作の様子を(同じキャビンの中に入って)新人が隣で見ることができないが、無人化施工はそれができる」(三鬼氏)。遠隔操作室で隣り合って座り、同じ画面を見ながら教えることができることは大きかった。若手の3人とも、2〜3カ月でスムーズに操作ができるようになったという。
 先入観やクセのない「まっさらな状態」だったため、吸収が早かった。さらに、建機は取扱責任者を決めて同じ人が乗るのが一般的な中、まっさらな状態を良い機会と捉え、あらゆる建機を操作できるよう教育した。「同時並行でさまざまな作業を進める今回のような現場では、これまでは一人が休むとほかの建機の作業まで影響がでてしまうこともあった。しかしこの現場では、稼働率が向上し効率的な作業が可能になった」(三鬼氏)。ベテラン+新人のチームは、当初の想定を上回る効果を生んだようだ。

   遠隔操縦ロボ導入  地元企業による維持管理も視野
 今回の現場では、潟tジタが九州地方整備局九州技術事務所と共同開発した建機の遠隔操縦ロボット『ロボQ』の改良版も導入。ロボQは、一般の建設機械に取り付けるだけで無人化施工が可能になるもので、災害復旧の初動時に迅速に対応することを目指して開発。今回初導入となった改良版の『ロボQU』は、各ユニットと操作レバー把持部のワンタッチ着脱化、故障モニタリングおよびフェールセーフ機能を拡充し、メンテナンス性と安全性を改善。組み立て時間も短縮した。キャビン内に設置されたロボQU 
 潟tジタでは、今回の現場をテストフィールドとし、ロボQを含む無人化施工オペレーターを教育するカリキュラムを作成したい考えだ。併せて、オペレーターを教育する指導者(講師)の育成策も検討。無人化施工は通常の建機と違い、キャビンの中から視点だけでなく、さまざまな視点の映像を見ながら操作する。通信機器など特殊な資機材を使うため、取り掛かりの段取りも全く違う。また、三次元設計データを基にした丁張レスの施工などi-Constructionの要素も不可欠だという。これらを総合的に教育できる指導者を確保し、無人化施工のオペレーターを全国で育成・確保可能な体制を整備。頻発する自然災害時への円滑な対応も目指している。
 さらに雲仙では、無人化施工で国や県が進めている砂防・治山施設が完成後の機能維持という長期的な課題がある。「われわれゼネコンが無人化施工専用の大型建機で除砂作業をするよりも、地元業者の方がロボQを積んだ小型建機で除砂した方が効率的かつ、迅速・円滑な対応が可能になる」(フジタ関係者)。i-Constructionの普及により無人化施工は、地域に根ざして展開する新たな段階に入ろうとしている。ksrogo