富山駅北の富岩運河環水公園西地区に、アートとデザインをつなぐ「富山県美術館」が誕生した。
アトリエやギャラリー、ミュージアムショップ、レストラン、カフェなど一部が先行オープンしたもの。建設規模はS(一部SRC)造3階建て延べ1万4990平方メートル。環水公園を受け止める放物線の形状、立山連峰に向かう大きなガラスのファサードが特徴。内外装に富山のアルミや県産材を用い、清澄で温かな空間を作り上げている。
建物中央を貫く約60メートルの廊下は、壁と天井に氷見の里山杉を格子状に仕上げて、木の温もりが癒しを感じさせる。2階から3階にかけて吹き抜けとなっている東側のホワイエは環水公園に面し、天井までの高さは約11メートルにもなる。壁一面のガラス越しには、雄大で美しい立山の眺望を楽しむことができる。
2階は20世紀美術、3階は椅子やポスターのデザイン展示、屋上庭園が子供の遊具広場となる。建築設計を担当した内藤廣氏は講演会で、「美術は心の内側を見つめる自己、デザインは他者とのつながり、子供は未来を示す。自己、コミュニケーション、未来の3段重ねの立体構成となっている」と設計コンセプトを説明した。
1階は浸水被害から作品を守るため、103台分の駐車場などが入る。
建物をぐるりと囲む大階段を上がっていくと、そのまま屋上庭園に出る。環水公園と一体となって、散策する気軽さで周囲の絶景が一望できる。公園内に美術館へと続くプロムナード(千年の桜並木)も整備され、新たな賑わい創出が期待される。
29日にグラフィックデザイナー佐藤卓氏がデザインした「オノマトペの屋上」が供用する。8月26日には展示室を含め全面開館し、記念展「生命と美の物語 LIFE―楽園を求めて」が始まる。見る・創る・学ぶという双方向の美術体験が展開されていく。