岐阜県の南部に位置し木曽川と長良川に抱かれ水と緑に恵まれる羽島市。市内には東海道新幹線「岐阜羽島駅」や名神高速道路の「岐阜羽島インターチェンジ(IC)」があり、「岐阜県の表玄関」として発展してきた。2015年には岐阜羽島IC近くにコストコがオープンするなど街の活性化が進む。また、懸案だった新たなごみ処理施設の建設地についても平方第二土地区画整理組合の保留地に決まるなど、さまざまな課題に積極的に取り組み、16年12月から2期目のかじ取りをスタートした松井聡市長に17年度事業を中心に話を聞いた。(聞き手は岐阜支局=高木敏之)
――懸案だったごみ処理施設の建設地が平方第二土地区画整理組合の保留地に決まった。
「ごみ処理施設の候補地については道筋をつけ、2市2町の組合事業として今後進めていただくためのスキームを作っている。このため、岐阜市南部、羽島郡2町、羽島市の住民が抱えている一番大きな不安について、一定の道筋を持って解消に向けた状況を作ることができた」
「一方で市民の大半の方には混乱した状況の中で、新しい候補地を選定して進めるには、施設の建設から稼働までに10年以上かかるということ理解してもらえたと思っている」
「しかし、その間に必要となる経費の増額分については、厳しい財政状況の中でさらに身を削りながら市民サービスと場合によっては市民の方に負担をお願いしなければならない。このような観点から、収支のバランスのとれた事業を進めていくという大きな課題に取り組んでいかねばならない」
――市政を運営していく上での取り組み方針について伺いたい。
「16年4月にはまちづくり基本条例を作り、市民、市役所、議会が一体となって、まちづくり、ひとづくりを進めるということを条例化した。今後は、条例の基本理念に基づいて、より一層の行財政改革の推進と情報公開、市民対話という形での納得型行政の実現を目指す」
「そのためにも隠ぺいや事後報告でなく、しっかりとした情報発信と意見交換、それに基づく首長としての決断という流れの中で、多くの人に理解してもらえるように税金を使い、事業を進めることを基本的な考えとしている」
「4年前の市長就任時から市民ファースト、市民第一主義という形で行政を進めてきて、この考えは着実に市民に浸透し、多くの方にご理解、ご協力をしていただいており、全てではないが、かつてないほど市民と行政の距離が近づいていると実感している」
――2017年度の予算について
「市民生活重視が基本だ。羽島市は社会資本整備の整備率、とりわけ箱もの関係については、他市に比べて充足度が低いのは事実だ。その状況で今後40年間で今ある健全なインフラ施設の長寿命化を図る場合には、過去5年間の平均整備費用が約31億円となり、毎年約14億円不足する計算になる。こうした状況は市民の方に1年以上前から説明し理解していただくようにしている」
「各事業を進めていく方法は、一般家庭の家計と同じで、財源性、実現性、発展性、継続性、効率性の五つの視点から、優先度や事業の選択と集中をしっかりと見極め、それを市民に説明しながら進めていくことが重要だ」
「5月からは市内11カ所のコミュニティーセンターで、タウンミーティングを実施する。市役所本庁舎の耐震化を始めとする市の重要行政課題を八つに絞り、年に4回実施する。1回に付き二つのテーマについて市が説明し、参加する市民と意見交換する。市民と行政が問題意識を共有し、一緒に考え政策決定の参考とする」
「また、9月23日と24日に市では初めて事業仕分けを実施する。一定の基準によって選定した十前後の事業を対象に、コーディネーターと仕分け人4、5人と市の担当者と各事業について効果や実績を議論し、その議論を基に市民判定人が「拡充」「改善」などを判定する」
――本庁舎の在り方について。
「市役所の本庁舎は建築から58年が経過し老朽化が進んでいるが、抜本的な対策を講じないまま現在に至っている。16年度には庁舎検討委員会を設置し、耐震対策や建て替えなど今後の方向性を定めるための検討を始めた。17年度も引き続き調査を予定しており、当初予算に庁舎建設基金積立金として1億円と検討委託料として50万円を計上した」
――最後に地元建設業界へのメッセージを伺いたい。
「市内の建設会社で従業員の方に防災士の資格を取っていただいた。16年度から平日に資格取得がとれるように商工会議所にお願いする形をとり成果を上げることができた。市役所もそうだが、建設業界との共通課題である人材育成と確保に向け、協力して努力を続けていきたい」
提供:建通新聞社(2017/04/05)