川端鐵工(黒部市生地芦区)を代表とするグループが提案した「小水力発電と交通網の拡充による持続可能な黒部まちづくり構想〜豊かな水資源の恩恵を多くの市民にもたらすまちを目指して〜」(地域・黒部市)が、まち・住まい・交通の創蓄省エネルギー化モデル構想として策定された。共同提案者はジオエナジー、アイル、日本アジアグループ、黒部市。
提案内容は、地域資源のエネルギー事業化と、これを足掛かりに様々なまちづくり事業をマネジメントする推進体を設立し、地域資源の恩恵を市民に還元する3本のリーディングプロジェクト(LP)を立ち上げ、市内の先導的取り組みを市域に展開・普及させることを目指すというもの。
主な取り組みは次の通り。
◎LP1(人流の活性化と低炭素化の両立)EVネットワークの拡充
▽小・マイクロ水力発電による地産地消エネルギー源とするEVバスの導入、市内拠点をネットワーク化
▽観光拠点として、既存のほかに再エネや工場などの産業施設も観光資源・回遊(観光客向け)のネトワークを形成
◎LP2(快適な住まいと低炭素化の両立)パッシブタウンの地域展開
▽YKKが計画・建設を進めるパッシブタウンをモデルに、その設計・施工ノウハウや高機能建材等の技術を市域に展開
▽地中熱エネルギー供給・需要可能性について適地検討を行い、パイロット実証を踏まえ、市内展開に向けて推進
▽パッシブタウンの実績を「黒部モデル」としてマニュアル化し、今後計画される住宅、商業施設、公共施設に反映
▽地元工務店にマニュアルを公開し、市内住宅・施設のパッシブ建築の認定制度を立ち上げ、普及を促進
◎LP3(基幹産業の振興と低炭素化の両立)
▽軽トラックをEV化し、燃料コスト低減をインセンティブとして農家に普及
▽マイクロ水力発電設備を導入し、EV軽トラックのエネルギー源とすることで地産地消を実現
これらの取り組みをYKKや地元企業、富山国際大学とも連携し、産学官の「オール黒部」で推進していく。17年度から各事業化協議会の設立準備や適地の交渉・調整などを進め、20〜24年度に発電設備の設置・運用開始、パッシブタウンの設計・施工・運用開始などを経て、25年度には市全域に展開するとしている。
今事業は国土交通省が低炭素社会の実現に向けて、まち・住まい・交通の一体的な創蓄省エネルギー化を推進するため、地方自治体や民間事業者らによる先導的な構想の策定を支援するもの。全国から企画提案を募集し、外部有識者や国土交通省関係部局により構成されたタスクフォースによる審査・選定・現地調査などを経て、今年度は黒部など5地域が選ばれた。