建通新聞社(神奈川)
2017/03/23
【神奈川】川崎市住政審 新た住宅施策の方向性で答申 中古住宅の価値向上など提言
川崎市住宅政策審議会(会長・園田眞理子明治大学教授)は3月22日、同市の新たな住宅政策の展開の方向性について、福田紀彦市長に答申を提出した。答申では、川崎市の住宅政策をめぐる課題として、空き家の増加、既存住宅の流通、高経年分譲マンションの運営と管理などを挙げて、八つの視点から提言。空き家対策では、管理不全な住宅が地域環境に悪影響を及ぼす可能性があるため、空き家を地域で管理する仕組みを構築するべきとした。
また中古住宅については、流通(売買)の促進を目指し、各種制度の周知や、消費者にわかりやすい形で中古住宅の品質・性能が示される環境を整えることが重要だと指摘。耐震性や省エネルギー性能の向上など、既存住宅の良質化に向けて、今後より重点的に通り組む必要があり、民間賃貸住宅の質の改善と適正管理の促進を図るべきとした。
高経年分譲マンションが増えている問題では、マンションカルテなどを活用しながら、適正な維持管理や計画修繕の実施、耐震改修の促進、リノベーションなどによる団地再生などに向け、管理組合の支援を強化するよう提案。同じく高経年の住宅地や団地については、建物の経年に合わせて高齢化が進行し、地域活力の低下が懸念されることから、住民や管理組合などの活動を支援し、地域の住環境や活力の維持・再生を図るべきだとしている。
ワンルームマンションの供給増加については、狭小な住戸が増加し、周辺の空き家化を招くなどの悪循環が起きているとし、今後も適正な指導・誘導を図るよう求めた。さらに敷地の細分化は居住環境を阻害する恐れがあり、敷地の適正規模について検討を進めるべきとしている。
答申に盛り込まれた提言の概要は次の通り。
【提言(1)市民ニーズに応じたより多様な住まいの構築】
@子育て世帯などに対する良質な住宅の供給と住環境の向上A高齢者の生活の基盤となる住まいの安定確保B住宅相談機能の充実C地域内での住み替えと住宅の世代間循環の創出D住教育などの推進
【提言(2)既存住宅の活用と良質なストックの形成(中古住宅の価値向上)】
@空き家の予防および既存住宅ストックの活用に向けた取り組みの強化A中古住宅の流通促進に向けた取り組みの展開B民間賃貸住宅等をはじめとした住宅の質の向上に向けた取り組みの強化C分譲マンションの適正な維持管理・再生などの推進Dワンルームマンションなどの適切な誘導の推進E敷地の適正規模の確保F高経年住宅地の維持・再生に向けた支援
【提言(3)経済格差の拡大への対応(住宅セーフティーネットの構築)】
@民間賃貸住宅などを活用した住宅セーフティーネットの展開A市営住宅の活用と入居管理の一層の公正化B特定優良賃貸住宅および高齢者向け優良賃貸住宅の今後のあり方についてCひとり親世帯や単身世帯に対する取り組みの強化
【提言(4)地域包括ケアシステムの実現に向けた住まい・住環境づくりの重点的展開】
@地域包括ケアシステムの構築に向けた福祉施策等との連携強化による住宅施策の展開Aサービス付き高齢者向け住宅などの立地・機能・運営の適正化
【提言(5)多様な施策との連携による総合的な住宅施策への本格展開】
@質の高い住宅地の形成A緑の保全B交通環境に配慮したまちづくりC防災・防犯力の強化D地域内就労の促進によるコミュニティー力の強化
【提言(6)将来都市構造に基づく地域特性を踏まえた施策の展開】
@地域の状況に即した防災対策の推進A農地の保全と活用B都市の縮小の検討C将来都市構造を踏まえた四つの生活行動圏別の施策展開
【提言(7)民間事業者や市民などの多様な主体との協働の取り組みの強化】
@エリアのマネジメントの取り組み強化Aコミュニティー活動を連動させる取り組み
【提言(8)川崎市の特性・特徴を踏まえた住宅施策の展開(川崎らしさの追求)】
提供:建通新聞社