高知県は、2020年の開館を目指し改築する新足摺海洋館の基本設計概要について、1月26日に開いた第4回基本設計アドバイザリー会議に報告した。規模は鉄筋コンクリート造2階建て延べ3310平方bで「水族館の展示と目の前の自然環境やアクティビティが連動している、日本初といえるような水族館」とし、建築概要や配置計画、外観計画、展示計画などを示した。
県は今回の会議での議論を踏まえて基本設計をまとめ、2月議会に報告する。17年度は引き続き実施設計に着手し、施設の詳細をまとめる。18〜19年度に建築工事を進め、既存施設の解体などを完了させた後、20年夏ごろの開館を目指す。
基本設計によると、配置計画では、目の前の海との一体感を出すため、竜串湾(桜浜)につながるアプローチデッキを整備、遊歩道も再整備し水族館をエントランスとして地域へ誘引する。
また、建物北側に設備スペースを設け塩害リスクに配慮した計画とし、敷地西側に将来増築などに対応可能なスペースを確保する。にぎわいを生み出すために、近隣で環境省が整備する「ビジターセンター」との間に屋根付き歩廊を設け、イベントなどの開催が可能な芝生広場を整備する。駐車場は現施設を上回る普通車143台、バス5台分を確保する。
外観計画では、竜串の美しい景観と呼応させる。波や風の侵食によって生み出された奇岩の造形美を水平ラインや開口部で表現、屋根の軒先を緩やかにカーブさせ、桜浜のなぎさや遊歩道に寄り添う建物形状とする。
展示・平面計画では、山から川、浅瀬の海、そして深海へと徐々に視点の深度を下げていく順路構成とする。最初のゾーンは、温帯性、亜熱帯性の植物や巨石群を再現し、河川に生息する魚類や、「コツメカワウソ」を展示する「足摺の原生林」。次に、桜浜に産卵にやってくるウミガメや竜串湾を象徴する生物であるサンゴ類などを展示する「プロローグ」と続く。
1〜2階にわたる「竜串湾」では1階で水中の大パノラマ、2階では水槽と目の前の海を一続きに見えるようにし、奇岩をモチーフとしたタッチングプールや、エサやり体験などの体験型ツールなどを配置する。
さらに、移動可能なユニット水槽を中心に、ユニークな特徴や習性を持つ魚類を展示する「足摺の海」、天井部分に外洋水槽をオーバーハングさせ、雄大な黒潮の海に包まれる演出を行う「外洋」、竜串湾に生息するウミウシとクラゲを幻想的に展示する「ウミウシ・クラゲ」、宝石サンゴや深海の珍しい生物標本を交えて展示する「深海」、定期的な展示発信により話題性を発信する「企画展示」、足摺・竜串の自然や生物多様性を地域で楽しみ、未来に残していくためのメッセージを発信する「エピローグ」と続き、ショップ・カフェに至る。
カフェには屋根付きの屋外席が設けられる計画。展示面積を最大限に確保するため、設備機器を一部外置きとし、キーパーヤードを縮減する。2階にはレクチャールームを配置し最大40人が収容できる面積を確保する。
防災計画では、南海トラフ地震に備えるため、重要度係数は1・25を採用し、大地震後に構造体の大きな補修をすることなく建物を使用できることを目標とする。
また、風水害リスクを軽減させるため、キュービクルや自家発電機などの最重要設備は2階や屋上に設置。屋根は耐塩害性に優れたステンレス性で、雨どいは全て外といにし、高水密サッシを採用する。
場所は土佐清水市三崎3039ノ1他、基本設計は大建設計(大阪市)と艸建築工房(高知市)の共同体が担当。
提供:建通新聞社