日本工業経済新聞社(群馬)
2017/02/01
【群馬】公共施設等で管理計画案
沼田市は、2017〜56年度の40年間を計画期間とする公共施設等総合管理計画の策定を進めており、このほど計画案をまとめた。対象は公共施設およびインフラで、建築後30年で大規模改修、60年で更新した場合、推計では更新などの全体費用が3031億円に上っている。1年当たり75・8億円で直近5年間の実績値平均18・3億円の4・1倍となるもので、現状どおりの維持・更新が困難になると見通している。対応として◇施設の長期活用◇施設の機能や規模の最適化◇ライフサイクルコストの縮減と更新投資の平準化− を方針に掲げている。
対象となるのは、公共施設が341施設、総延べ床面積29万7170uと、市道など道路151万932m、橋梁313橋や上下水道からなるインフラ施設。今後10年間で建築後30年を迎える建物が全体の約9割あることや、人口減少・少子高齢化から求められる公共施設の変化、更新のための財源不足が懸念されるなど、公共施設等を取り巻く環境は厳しい。
更新費用の推計は、建築後30年で大規模改修、60年で更新した場合のもので、全体費用は3031億円。公共施設に限っても更新費用は1319億円で1年あたり33億円が必要となる。直近5年の実績平均11億円の3倍に相当する。
対応として3つの基本方針によって、施策を進める。
施設の長期活用は、長寿命化への取り組みで、計画的な管理体制を整えて実践する。日常点検、法定点検、緊急点検など確実に実施して現状を的確に把握。さらに、事後保全から予防保全へ転換して、計画的な施設保全を進める。
施設の機能や規模の最適化は、人口動態、変化する市民ニーズへ適切に対応するため、総合的かつ計画的な施設整備を推進。市民サービスを低下させるのではなく、施設機能や規模の適正化で、住民との協働も考慮しつつ質の高い市民サービスを維持する。また、現在の財政状況で維持できる適正な施設量とするため、今後も維持する公共施設の保有量について目標を定め、施設総量の最適化に取り組む。また、公共施設の多くは、セーフティネット施設としての役割などから維持更新をしなければならないため、利用率の少ない施設などは用途の変更などで、より有効活用が可能な形を検討する。
ライフサイクルコストの縮減と更新投資の平準化に向けては、総合的かつ計画的な管理を推進して削減に努める。予防保全を重視し、大規模な改修や建て替えなど更新時期を調整、更新投資の平準化に取り組む。
なお、目標として掲げたのは、公共施設の保有量(延べ床面積)で40年間に40%削減する。現在の施設に対して今後も維持する施設は多機能化、長寿命化を図り、見直す施設は統廃合・複合化などで集約させる。さらに維持管理費の削減なども行う。
インフラは公共施設に比べ、縮減や廃止を検討する期間はより長くなることから具体的な数値目標を設定していない。だが、公共施設同様に今後もライフサイクルコストの縮減を図りつつ、長期的な視点から社会構造の変化などで不要なインフラ資産がないか確認し、利用需要の変化に応じた総量の最適化による更新投資の平準化や抑制を目指す。
基本方針推進のための主な実施方針は次のとおり。
【維持管理・修繕・更新等】
点検・診断の結果に基づき、必要な対策を適切な時期に効率的・効果的に実施し機能を維持。予防保全への転換へ、メンテナンスサイクルを構築(点検・診断→対策の実施→情報の記録→次期点検・診断)。施設更新は、人口動向や市民ニーズ、周辺施設立地状況、類似施設状況などから、適切な規模と機能の複合化等を検討する。ESCO事業など民間との連携も視野に入れる。
【安全確保】
建築後30年程度経過している施設は、必要に応じ劣化度調査。危険性が認められた場合は更新、改修、解体等を検討。
【耐震化】
未実施施設のうち、耐震化が必要で今後も継続して保有する施設は、施設の老朽度、需要を考慮し段階的に取り組む。
【長寿命化】
ライフサイクルコストの縮減を見込むことができる施設が対象。維持管理費用の抑制と平準化を図る。
【施設再編の推進方針】
人口動向、市民ニーズや財政状況を踏まえ、統合や廃止等施設の再編を検討。
検討にあたっては、必要に応じ、施設のハード面(建物性能)、ソフト面(利用・管理状況)について評価項目を設定、各項目における診断結果をもとに検討、(仮)アクションプランを策定し取り組む。
【新たな財源の確保】
受益者負担の見直し、PPP・PFI事業などで、新たな財源確保を検討する。