京都市は23日、京都市立芸術大学移転整備基本計画案を市会経済総務委員会に報告した。
西京区大枝の市立芸大を移転するもので、移転予定地はJR京都駅の東側に位置する崇仁地域。塩小路通南側で鴨川と高倉通に挟まれたエリアで敷地面積は約3万8000u。現キャンパスよりも敷地面積は減少(約6万800u→約3万8000u)し、A地区(約1万2000u)・B地区(約6000u)・C地区(約2万u)の3地区に分かれることになるが、都市中心部における土地の有効活用を図り、延床面積は増加(約3万9000u→約5万5000u)する計画。
芸大以外では、市立銅陀美術工芸高等学校(中京区土手町通竹屋町下る鉾田町542/美術工芸科生徒278人、教職員38人、延約8000u)を芸大移転予定地のC地区に移転整備する。
崇仁保育所は下京渉成小学校第二教育施設の元六条院小学校の一部(稚松公園(南側))の活用も含めて検討)に移転整備する。保育所の新施設は、実績ある社会福祉法人等の豊富な経験と国の保育所等整備交付金を活用し、公募で整備・運営する民間事業者を選定する。
芸大移転では「芸術」「大学」「地域」の3つの役割を果たすため、新キャンパス全体をTerrace(テラス)と位置づけ、基本コンセプトに定めた。
配置計画は案1、案2、案3の計3案を示した。今後、設計者による提案を受け、大学関係者や地域住民らと対話を重ね、ふさわしい配置を検討する。
案1は、学部ごとの機能・設備をできるだけ集約し、一体的な教育研究スペースの形成や効率的な設備配置を可能とするため、C地区を中心に美術学部、A地区に音楽学部を配置する。C地区ではギャラリーや資料館といった展示スペースを、A地区では音楽ホール(講堂)を塩小路通沿いに配置する。
案2は、学部を横断した活動・交流を促進するため、C地区に美術学部、音楽学部を複合配置する(C地区に音楽学部を配置するため、美術学部は必要面積を確保する必要から、A、B、C地区にまたがった配置となる)。C地区では音楽ホール(講堂)や資料館を、A地区ではギャラリーを塩小路通沿いに配置する。
案3は、学部ごとの機能・設備をできるだけ集約し、一体的な教育研究スペースの形成や効率的な設備配置を可能とするため、C地区を中心に美術学部、A地区に音楽学部を配置する。A地区にギャラリーや音楽ホール(講堂)といった発信交流機能を集約する(A地区にギャラリー、音楽ホール(講堂)及び音楽学部を集約するために、グラウンドは2階レベルとし、下部を音楽学部スペースとして利用する)。
耐震安全性の確保では、避難所として位置付けられる学校に適合する耐震安全性を有した施設とする。
バリアフリー・ユニバーサルデザインに配慮。音楽学部練習室など音や振動が発生する施設の配置に応じ、防音壁や浮き床の設置なども含め、防音対策を講じる。
環境面では、太陽光発電や地中熱利用、雨水・井水利用など自然エネルギーの利活用を図るとともに、蓄電設備やコージェネレーションシステムの導入を検討。屋外空間や屋上の緑化、断熱性の高い外装材の選定や、日射の制御などに配慮し、建築物の断熱性を高める。維持管理コスト低減の観点から、設備に頼らない環境負荷低減手法(庇、ルーバーによる日射制御や吹き抜けによる自然換気など)を積極的に導入する。
移転予定地は3地区に分かれているが、施設間でのエネルギー融通など効率的なエネルギーマネジメントシステムを検討する。雨水の敷地外への流出を抑制するため、地中への浸透性がある排水施設や、雨水の一時貯留ができる施設を設ける。みやこ杣木(京都市地域産材)を積極的に用いる。
CASBEE京都最高ランクのSランクの取得を目指す。
地域に開かれたキャンパスとするため、セキュリティ対策ではセキュリティのレベルを段階的に区分。入退場管理や通報システムに関する設備導入を検討する。
景観面では、キャンパス全体と各施設の建築デザインを総合的に検討。B地区は北側の住宅地に対する視線等に配慮するとともに、高瀬川や柳原銀行記念資料館などと調和がとれるよう計画する。JR沿いは市民や京都を訪れる人々にとってランドマークとなるよう検討。塩小路通は新たな賑わいのため、市民等が気軽に立ち寄れるよう計画する。
最適な事業手法として、分離発注、デザイン・ビルド、デザイン・ビルド・オペレート、PFIの4手法を比較検討。設計と施工を分離して発注する分離発注手法が最適とした。
整備面積は、美術学部・美術研究科が延約2万8000u(各専攻、学部共用(工房・加工スペースなど))、音楽学部・音楽研究科が延1万u(各専攻、学部共用(合奏スペースなど)、音楽ホール兼講堂)、共通約1万7000u(共通教育スペース、日本伝統音楽研究センター、芸術資源研究センター、付属施設、事務局、ギャラリー、収蔵スペースなど)で、合計5万5000uとした(銅陀美術工芸高校、既存施設を活用する予定の元崇仁小学校体育館の面積は含まず)。
概算事業費(設計・調査費、建設費)は約250億円と試算した。
設計者は29年度に公募型プロポーザルで選定する。基本設計・実施設計を29年度〜31年度まで行う予定。設計完了後、32年度に施工者を選定し、32年度〜34年度で工事を進め、35年度の供用開始を目指す。
移転予定地の既存施設については、A地区の元崇仁小学校は解体、体育館は活用する方針。移転予定地外の下京地域体育館及び崇仁児童館は現状維持とする。B地区の崇仁保育所は移転し既存は解体。柳原銀行記念資料館は現状維持。C地区の市営住宅(下之町西部団地)は塩小路高倉北東ブロックと河原町塩小路南東ブロックに更新住宅を新たに建設し、住民の理解を得た上で分散移転する。下京いきいき市民活動センター第二高齢者ふれあいサロンは、下之町西部団地の更新住宅に配置予定の集会室で代替し、同団地の移転・建替えとともに廃止・解体。崇仁第三浴場は、下之町西部団地の更新住宅に各住戸に浴室を設置する予定のため、同団地の移転及び入居に一定のメドがついた段階で廃止・解体する。崇仁公園は芸大用地とするため廃止するが、土地区画整理事業により、施行地区内で別途公園を確保する。
基本計画案については、2月1日から3月5日までパブリックコメントで市民意見を募り、3月下旬に基本計画を策定する。
基本計画策定業務等は日本総合研究所大阪本社(大阪市西区)が担当。