建設業労働災害防止協会千葉県支部の尾頭博行支部長をはじめ、柴田一敏副支部長、前田泰弘副支部長、伊藤靖雄副支部長、岩田丈副支部長、神田公司・専務理事の三役は11日、新年のあいさつとして、千葉労働局に福澤義行局長らを訪ねた。あいさつに引き続き行われた会談では、現在、厚生労働省が推進する「働き方改革」について、福澤局長が「(建設業では)働く人の安全と健康なくしては成り立たない。建災防のみなさんの活動自体が『働き方改革のベースになる』と認識していることから、今後ともマンネリ化することなく進めて頂きたい」と要請した。
◆女性の活用を推奨
会談では冒頭、福澤局長が「建災防みなさんの尽力のおかげで、昨年の建設業における労働災害は前年に比べて現時点では減少したことに感謝申し上げる次第」と弁。建災防の非会員による死亡災害の発生件数が多いとの見方に対しては「建災防の中に組織の小さな会社などを取り込み、業界が一丸となって労災防止活動に取り組むことが肝要だと思う。地道な活動ではあるが、支部長の指摘の通りだとつくづく感じている」とした。
建設業における人手不足に対しては「ハローワークにも建設業の求人は出るが、中々応募する人がいない。職種を限ってみると、型枠大工などは8〜10倍となり、求人の10に対して1人か2人の応募しかない」との厳しい現状を指摘。「外国人の技能実習制度も3年から5年にある意味で延長になるが」と前置きしたうえで「このまま建設業に若い人たちが入って来なくなるというのは大問題である」と強調。また、年末に実施したトンネル工事の安全パトロールに言及し、「現場の最先端の職人の方に話を聞くと、一人前になるのには10年かかると言う。それらを鑑みて、これからの公共工事の『質』はどうなるのだろうと考えさせられた」と述べ、危機感を募らせた。
一方で「内々ではあるが、昨年末あたりから(一社)千葉県建設業協会の畔蒜会長をはじめ、役員の方の会社を訪問させて頂いている」と明かした福澤局長は「若い人たちが入って来ないと、建設業界はすたれてしまう。それにより社会インフラは、一般の人(受益者)には、安いかもしれないが、質が悪化し大変困ったことになる」と仮定。「それを防ぐためには『若い人、特に女性が現場で働けるような労働条件と労働環境づくりを目指してはいかがでしょうか』という提案を申し上げている」と説明した。
加えて「週休二日制や労働時間、賃金、福利厚生などの話もある。業界を挙げて女性が現場に入って来られるような環境にすることが、建設業における働き方改革である」と主張した福澤局長は「業界全体として、もしそういった話があるのであれば、労働局、監督署、ハローワークを挙げて我々は支援する」との考えを示した。
◆業界次第で全面的バックアップ約束
「旗を振り背中を押すが、建設業のみなさんがやって頂かないと始まらない話であることから、畔蒜会長に旗振り役をお願いしたところである」とした福澤局長は「建設業協会に対しての正式な提案と説明はこれからになるが、その暁には、建設業全体の発展のために、是非とも建災防の協力をお願いしたい」と要請した。
これらに対して尾頭支部長は「課題は山ほどあるが、我々建災防としては常に安全を第一に、力を合わせて建設業としての役割を果たしていく姿勢でいる」と応じた。
また、福澤局長は「ある意味で『業界の労働環境を大きく変える』という話なので『では明日から』ともいかない。地道な努力の一方で、あまり長々と進めていては、先に業界が潰れてしまうことにもなりかねない。ある程度のスピード意識も必要だと思う」と述べ「県土整備部との接触も図っており、協力し合えることや役割分担を決めて『業界の健全な発展のために行動を共にしていこう』と呼びかけようとしているところである」と説明した。
◆好リターンを確信
さらに「ある程度の初期投資と労務管理制度の整理は必要となるが、女性が現場に一人でも入ってくると『手間、暇、金をかけただけのリターンは必ずある』という話を色々な会社から聞いて、私も確信している」と述べた福澤局長は「女性もパートではなく、自分が生涯にわたって勤められるような会社を探している」と前置きしたうえで「ある会社では、女性が事務部門のみでなく衛生管理者として現場にも出て、営業も行うことで、会社の中の雰囲気も変わる。その女性がキャリアアップしながら働けることで、それを見た後輩たちが『この会社ならば私も頑張ろう』という意欲の若い女性が入って来るという好循環が生まれ、活性化している」との事例を説明。「建設業もとかく現場に女性を配置し、その女性が長く働けるという環境をつくって頂ければ、建設業界のイメージアップにも繋がると思う」との考えを示した。
これに対して尾頭支部長は「そのことが、現場における無事故無災害に対する意識に大きな影響を与えるかもしれない」と同調した。