熊本地震から8カ月が過ぎた。被害が大きかった市町村では応急仮設住宅(全4303戸)が整い、被災者は生活再建の第一歩を踏み出している。ただ、次なるステージは、入居期間最長2年とする仮設後の暮らしだ。その後も仮設住宅を活用するなどの案も聞こえてくるが、依然はっきりしない住まいの確保に高齢者や障がい者をはじめとする入居者は不安を抱えている。
住宅の自力再建が困難な被災者が長期生活できる災害公営住宅には、昨年、国が補助整備費約130億円の配分を決めた。本紙取材によると現在、県内11市町村が「建設」や「検討」の意向を示している。先月の市町村定例議会では、関連経費を計上する自治体も出始め、具体化に向けて計画が動き出した。
県災害警戒本部が昨年12月20日に公表した熊本地震等被害状況(第203報、速報値)によると、県内の住家被害数は17万9028棟にのぼっている。
このうち全壊2452棟、半壊1万4985棟、一部破損9万1995棟の被害を受けた熊本市は、150戸の災害公営住宅を建設する。第一段階として南区の白藤と城南町に計100戸を整備する方針を固め、12月補正予算で設計や工事に充てる費用19億7490万円を計上した。
計画では、市営白藤団地内の残地にRC造7階建の1棟80戸を建設予定。城南町内にはRC造3階建1棟20戸を整備する。一方、残る50戸は市中央・東部方面を予定しており、今後公有地を前提に用地を選定して必要な関連予算を確保していく考えだ。
市住宅課は、年度内の設計や調査発注に向け準備を進め、「入居期限に合わせて早期の着工・完成を目指したい」としている。
宇城市は、公営住宅等のニーズを把握するため、半壊以上の世帯を対象にアンケート調査し、100戸程度の建設を決めた。建設地は、市有地を候補にこれから検討していくが、数カ所に分散する考え。▽直営▽買い取り▽借り上げ―の三つの整備手法を検討している。完成は30年3月末を予定しており、補正予算には、工事費約25億円と委託費1億円をつけた。
宇土市は、25戸の住宅を建設する。3月までに地質調査と設計を始める予定で、委託費4156万円を予算化した。工事は29年度に発注し、同年度内の完成を予定している。
同じく29年度の完成を目指し甲佐町は、甲佐地区30戸、乙女地区10戸、白旗地区10戸の予定戸数を表明した。計画の推進にあたっては、町が用地買収や造成工事を行い、設計や建築工事を県へ委託する方針。補正予算には、整備委託費9億9049万円を計上した。
南阿蘇村は、復興まちづくり計画案に、袴野・長野、乙ヶ瀬・沢津野、栃木・黒川、立野・新所・立野駅の4地区を対象に建設を提案している。住宅50戸分の設計予算を確保しており、地域住民との協議等を取り付け、28年度中にも整備計画を打ち出し、29年度に設計や用地に着手、30年度までに着工したいとしている。
このほか、災害公営住宅を検討しているのは、西原村、大津町、益城町、嘉島町、御船町、美里町。
約5800棟が全半壊した益城町は、先月27日を回答期限に応急仮設住宅やみなし仮設住宅世帯から住まいの意向等に関するアンケート調査を実施した。結果を踏まえ、災害公営住宅の詳細を早急に具体化する。西原村、御船町などもアンケートやワークショップなどを行い、必要な戸数を把握した上で、復興計画などに盛り込んでいく方針だ。
一方、県は、市町村から整備要請があった場合に業務を受託する体制を整えている。補正で、まずは約300戸分の整備事業が受け入れられるよう約12億円の予算を確保した。県建築住宅局の田邉肇局長は「災害公営住宅の整備指針の策定も急いでおり、要請があれば協定を結び、サポートしていく」と話している。
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