オリンピックアクアティクスセンターは「1・5万席で恒設し減築しない」、海の森水上競技場は「コストをさらに削減し計画地で建設する」―。2020年の東京オリンピック・パラリンピック競技大会の会場見直しを結論付けるため11月29日に開かれた、国際オリンピック委員会(IOC)と政府、東京都、大会組織委員会のトップによる4者協議で、都の提案した会場整備の方針が承認された。有明アリーナについては、「横浜アリーナ活用の可能性について、クリスマス(12月25日)までに結論を出すよう、引き続き検討する」との都の提案を認めた。
ジョン・コーツIOC副会長、丸川珠代五輪担当相、小池百合子都知事、森喜朗組織委会長らによる4者協議では、小池知事が都の考える競技会場見直しの方向を提示した。
水泳会場として利用するアクアティクスセンターについては、当初予定していた2万席で建設し、大会後に5000席に減築する計画を、「1万5000席の施設を新築し、減築をしない」ように変更。建設費を513億円まで削減する。
ボート・カヌー(スプリント)の競技会場とする海の森水上競技場は、宮城県の長沼ボート場を活用する案と比較検討を進めてきたが、「関連する費用やロケーションを考慮した結果」(小池知事)、さらなるコスト削減に努めつつ現在の計画地で建設を進める方針を打ち出した。長沼ボート場については、コーツ副会長が「事前キャンプの場として利用することを確約する」と述べた。
一方、バレーボールなどの会場とする有明アリーナについて小池知事は、現行計画に沿ってコストを削減する案と、横浜アリーナを利用する案で結論が出ていないと説明。「引き続き検討を行い、クリスマスまでに最終の結論を出したい」と理解を求めた。
これに対し、組織委の武藤敏郎事務総長は、「横浜アリーナは警備や輸送など周辺環境の対応が難しい。横浜市の同意も得られていない」と課題を指摘。有明アリーナは各競技団体が後利用に積極的に関わっていく方針を示していることも指摘しつつ、「コストについては都の見直し努力によってさらに削減が可能になった。民間活力の導入などによりさらなる削減も実現できるのではないか」と提案した。
IOCのクリストフ・デュビオリンピック統括部長は、横浜アリーナの活用に当たって「警備や輸送を考慮した会場周辺のスペースが必要であり、詳細な運営計画も必要になる。そして全ての関係者の合意が必要。大変な作業になるだろう」と懸念を示しつつ、「IOCとしても都の検討作業に最大限協力する」と答え、都の最終結論を待つ姿勢を示した。
都が恒設施設として計画している3施設は、いずれも設計・施工一括方式による契約を済ませ、海の森は一部工事にも着手している。見直しの方向が決まった2施設は今後、設計の見直しなどの作業を急ぐ。
提供:建通新聞社