徳島市の音楽・芸術ホールの整備と中心市街地の活性化について、今後の推進方策を専門的知見から検討する二つの外部有識者会議は15日、市への提言書をそれぞれ遠藤彰良市長に提出した。音楽・芸術ホールについては、早急に建設地や施設規模などを固め、一日でも早く新ホールを整備するよう求めた他、中心市街地(新町西地区)の活性化については、交流人口と定住人口両方の増加を目指し、市が示したまちづくり案や川の駅ネットワーク構想など関連事業について、具現化できるものから速やかに取り組むよう要望した。提言書の提出を受けて市は、12月市議会定例会までにできる限り今後の方針を固めることにしている。
二つの外部有識者会議は音楽・芸術ホールの整備を検討する「音楽・芸術ホール整備推進会議」(委員長・山中英生徳島大学教授)と市中心市街地の活性化を検討する「中心市街地活性化会議」(委員長・奥嶋政嗣徳島大学大学院准教授)。新町西地区再開発事業からの白紙撤回に伴い、市が発足した「中心市街地活性化推進本部」(本部長・遠藤市長)の諮問機関。
音楽・芸術ホール整備推進会議の提言では、山中委員長が提言書を遠藤市長に提出。新ホールの整備と新ホール完成までの方策について提言した。新ホールの整備については、基本的な考え方、建設場所の選定、施設の規模・機能、整備手法とスケジュールについて明記。検討に当たっては、県都にふさわしい新たなホールの一日でも早い開館を目指し、これまで議論されてきた新ホールの基本理念や基本方針に新たに社会的包摂という新しい視点を加え、ホールのコンセプトを明確にして市民と共有しながら進めるべきとした。
また、公共交通機関によるアクセスが可能で最寄り駅などから徒歩による来館が可能な中心市街地への早急な建設地確保を促し、1800〜2000席程度のホールと200〜300席または500席規模の小ホールを検討するよう求めた。整備に当たっては、設計・工事期間を短縮できる点などから、民間活力を利用したPFIやPPP方式を視野に入れた検討を進めるべきとし、2017年度に建設候補地の選定と基本構想・基本計画の見直しを行えた場合、23年度に開館が可能というプロセス案を示した。
この他、新ホールの完成までの方策については、文化センターの耐震リニューアル、代替ホールの整備、その他の方策についての検討結果から、文化センターの耐震リニューアルを行わず、代替ホールについても新ホールの早期整備を前提にすれば必要ないとし、文化センターの舞台備品の有効活用や利用者ニーズを把握し、他のホールを有効利用できるような支援策を考えることが必要不可欠とした。
提言書提出の際、山中委員長は「一年、一日でも早い新ホールの整備をお願いしたい」と要望するとともに、「整備に当たっては県と市が連携、協調することも必要」と強調した。提言書を受け取った遠藤市長も「提言を基に市として整備方針を早急に打ち出したい」と述べたが、12月市議会定例会までにどの程度まで方向性が打ち出せるのかについては言及を避けた。
一方、中心市街地活性化会議の提言では、奥嶋委員長が提言書を遠藤市長に提出。新町西地区のまちづくり、ひょうたん島川の駅ネットワーク構想の見直し、眉山山頂整備事業、シンボルゾーン等光環境整備事業、さらなるにぎわいづくりに向けた取り組みについて提言した。このうち、新町西地区のまちづくりについては、まちづくりの方向性、交流人口と定住人口それぞれの拡大、歩いて楽しむまち−に向けた考え方を整理。市が示したまちづくり4案を基に、交流人口と定住人口両方の増加を目指し、必要な整備などを求めた。特に徳島駅から眉山までのシンボルゾーン内については、新たな公共交通システムの導入や自動車通行の抑制、自転車専用レーンの整備による安全な歩行空間を確保し、「歩いて楽しむまち」という観点で活性化を図ることも重要とした。
提言書提出の際、奥嶋委員長は「関係者との調整に時間を要するものもあるが、このまま何年も現状のままということは避けるべき。具現化できるものから速やかに取り組むようお願いしたい」と要望した。提言書を受け取った遠藤市長も「中心市街地の活性化はまさに喫緊の課題。できるものから速やかに取り組んでいきたい」と述べた。
提供:建通新聞社