三重県県土整備部は、建設業のあるべき姿に向けての施策などを盛り込んだ「新三重県建設産業活性化プラン(仮称)」(以下、新プラン)の「最終案」を公表し、検討中となっていた目標値や具体策などを示した。11月14日に津市内で開催された第4回三重県建設産業活性化プラン検討会議(委員長・酒井俊典三重大学大学院教授)で県側が示したもので、2016年度から19年度までの4年間でさまざまな施策に取り組み、19年度の目標値として「売上高経常利益率」など3項目について数値を示した。審議では、目標値の妥当性などが審議され、同会議としてこれを了承した。建設業界からは、三重県建設業協会の山野稔副会長が委員として出席し意見を述べた。今後、県は必要な修正を加え、12月県議会の常任委員会で報告する予定。
県では、建設業の活性化を促進するため県行政と建設業界が協力して取り組む施策「三重県建設産業活性化プラン」を12年度に策定し、「技術力を持ち地域に貢献できる建設業」を将来ビジョンとして掲げ、15年度までの4年間で入札制度の改善などに取り組み、その成果として、経常利益率など三つの目標値を達成させた。しかし、経営環境は依然として厳しく、活性化が実感できないとの判断から、将来あるべき姿を見据えた新プランの策定に着手した。
新プランでは、建設業のあるべき姿の実現に向けて、前プランと同様に「技術力」、「地域貢献」、「経営力」の三つのキーワードについて建設企業が解決すべき課題を抽出し、それぞれ指標を設けた。具体的には、「技術力」の指標を「工事における若手技術者の登用率」とし、15年度の実績「17・5%」に対し、19年度の目標値を「21・0%」。「地域貢献」の指標を「維持修繕工事における地域維持型共同企業体での施工率」とし、15年度の実績「43・6%」に対し、19年度の目標値を「53・0%」。「経営力」の指標を「売上高経常利益率」とし、15年度の実績「2・63%」に対し、19年度の目標値を「2・72%」とした。
取り組み目標の根拠付けを見ると、「若手技術者の登用率」は、全体工事件数のうち、若手技術者(39歳以下)が配置技術者として登用される工事件数の率。15年度では、土木一式工事が約700件あり、このうち、若手技術者の登用率が17・5%だった。今後の推定として、工事量の減少傾向などを考慮すると、19年度には16・2%が想定される。そこで、目標として、16年度時点で、三重県土木施工管理技士会に登録する技術者が35歳以下では140人いることから、4年後にこの140人が全て、工事に登用される設定で換算した数値の21%を19年度の目標とした。
「維持修繕工事における地域維持型共同企業体での施工率」は、15年度の土木系維持工事(側溝、河床掘削など含む)のうち、雪氷や除草などの地域維持型業務が占める率で、15年度は43・6%だった。今後の推定として、現状の予算配分を前提に、現状の地域維持型の工種だけで想定すると、19年度は43・4%と横ばいが見込まれる。地域貢献の観点から道路側溝整備などの工事を地域維持型として発注し契約額を増やすことで、53%を19年度の目標とした。
「売上高経常利益率」は、売上高階層(1億円以上)の売上高経常利益率(東日本建設業保証調べ)。14年度決算の三重県の平均値が2・72%(所管内全体平均2・92%)と過去10年間では最高値を示したが、15年度は2・62%と微減となった。目標値の設定に当たっては、特需で数値が4%台に上がった東北3県や製造業の水準を目指すことは困難であること、また、新プランにより、人材雇用・育成の支出など未来への投資が必要となる一方、入札制度の改善や下請けの利潤の確保などにより、建設業全体で適正な利潤を確保することで、利益率を維持していくことを目指すものとし、19年度の目標値を2・72%とした。
これらの指標、目標を達成させるための取り組みを9項目掲げ、各施策と実施スケジュールを示した。
主な内容は次の通り。
◆確かな技術力を持つ企業
〈取組1〉―他機関発注工事の受注を可能とする技術力
@総合評価方式対応力向上の取り組み〈16〜19年度実施〉A国などへ県内企業受注機会拡大に関する要望〈16〜19年度実施〉B建設ICTなどの情報提供〈16年度検討、17〜19年度実施〉C積算能力の向上の取り組み〈16年度見直し・試行。17〜19年度試行〉―積算参考資料の見直しを実施した上で、予定価格の事後公表の拡大に取り組む
〈取組2〉―技術力向上に向けた取り組み
@総合評価方式適用下限価格の引き下げ〈16〜17年度検討、18〜19年度試行〉A若年者などの定着に向けた計画的な育成・支援〈16〜19年度実施〉B技術者・技能者の技術力向上のための研修の支援〈16〜19年度実施〉C優良工事の表彰〈16〜19年度実施〉D建設キャリアアップシステムの活用の検討〈16〜19年度検討〉―国が取り組む建設キャリアアップシステムE総合評価方式における工事成績評価方法の見直し〈16年度検討、17〜19年度実施〉
〈取組3〉―若手が活躍する場の創出
@若手技術者対象工事の発注〈17〜19年度試行〉A熟練技術者が若手技術者を支援する仕組みづくり〈16年度検討、17年度周知、18〜19年度実施〉
◆地域に必要とされる企業
〈取組4〉―企業の連携による包括的な維持修繕の促進
@地域維持型業務委託の改善と拡大〈17年度勉強会、18〜19年度検討〉A地域維持型工事発注の実施〈17年度勉強会、18〜19年度検討〉B維持修繕を担う企業体の企業間の役割の見直し〈17年度〜19年度検討〉
〈取組5〉―大規模災害発生後の復旧体制の確立
@災害対応訓練の実施〈16〜19年度実施〉A地域の核となる企業の育成〈16年度検討、17年度検討・周知、18年度改正・実施、19年度実施・検討〉
◆未来に存続する企業
〈取組6〉―計画的・安定的な受注・経営が可能となる入札制度への改善
@地域機関ごとの事業規模の明確化〈17年度検討、18〜19年度実施〉A公共工事の発注見通しの改善〈16年度検討、17〜19年度実施〉B企業の受注機会均等の取り組み〈16年度検討、17年度見直し、18〜19年度実施〉C入札参加業者数の改善〈17年度検討、18年度試行、19年度実施〉D管内下請けの導入〈16年度検討、17年度周知、18〜19年度実施〉Eゼロ県債・債務負担行為の活用〈16〜17年度実施、18〜19年度実施・ゼロ県債の調整〉F余裕期間制度の導入と活用〈16年度検討・実施、17〜19年度実施〉
〈取組7〉―適正な利潤が確保できる入札制度への改善
@適正な予定価格の設定〈16〜19年度実施〉A総合評価方式における価格評価方法の見直し〈16〜17年度検討、18年度改正・実施、19年度実施〉B低入札価格調査制度の改正〈16〜17年度検討、18年度改正・実施、19年度実施〉C現場状況の変化に対応した適切な設計変更〈16年度効果・検証・見直し、17年度改定ガイドラインの運用、18年度運用、19年度効果・検証〉D標準工期の見直し〈16年度検討・見直し、17年度実施、18年度実施・実態把握、19年度実施・検証〉Eヒアリングなし型の総合評価方式の拡大〈16〜19年度実施〉F総合評価工事における提出書類の簡素化〈16〜17年度検討、16〜19年度試行〉G電子化の推進〈16〜19年度実施〉H円滑な工程管理に向けた受発注者間などの情報共有〈16年度試行拡大・実施拡大、17年度試行拡大・継続、18年度試行拡大、検証・継続、19年度実施・継続〉I生産性向上に向けた技術活用の推進(規格の標準化、建設ICT)〈16年度活用促進・検討、17年度活用促進・要領などの整理、18年度活用促進・段階的に導入、19年度データベース化検討・段階的に導入〉J「社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン」の活用〈16〜19年度実施〉K技能労働者の賃金等の調査の実施〈16年度検討、17年度一部試行、18年度試行、19年度実施〉L重層下請けの改善〈16年度検討、17年度周知、18〜19年度実施〉M総合評価方式適用下限価格の引き下げ(再掲)
〈取組8〉―入職促進の取り組み
@教育機関への働き掛けとインターンシップの支援〈16〜19年度実施〉A建設業の理解のためのPR〈16〜19年度実施〉
〈取組9〉―完全週休2日制など労働環境改善の取り組み
@土日完全週休2日制を条件とした入札の試行・拡大〈16年度検討・試行、17年度検証・試行拡大、18年度検証・試行拡大、19年度検証・実施に向けた整理〉A安全な職場環境づくりの促進〈16〜19年度実施〉B女性就業者の職場環境の改善〈16〜17年度検討、18年度試行、19年度検証・試行拡大〉
提供:
建通新聞社