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建通新聞社
2016/11/07

【大阪】紀伊山地大規模土砂災害対策が新たな段階に

紀伊山地の大規模土砂災害対策が新たな段階に入る―。国土交通省近畿地方整備局は、11月2日に開かれた「紀伊山地における大規模土砂災害対策の計画段階評価に関する有識者委員会(委員長=藤田正治京都大学防災研究所教授)」で対応方針原案が了承されたことを受け、年内にも対応方針を決定する。引き続き、2016年度中に新規事業採択時評価(本省)に駒を進め、17年度の事業化を目指す。
 有識者委員会では三つの原案(第1〜3案)を比較検討し、費用、実現性、柔軟性の観点から最も有利な案として、「支川流域で砂防堰堤を中心に整備する」第2案を妥当と判断した。
 対策範囲は、紀伊山地のうち熊野川、日置川、那智川の流域。過去の大水害の実績を踏まえ、土砂流出に伴う市街地の土砂・洪水氾濫、土石流による重要な道路、集落の被害を防止・軽減する。 具体的な対策に当たっては、砂防堰堤の整備により山脚を固定する他、支川ごとの地形や地質、特性に応じて山腹保全工や集落移転を柔軟に組み合わせて、効果的、効率的に対策を進める。
 対策費用には約800億円を概算。これにより被災家屋数は5310戸から199戸、被災事業箇所は61カ所から1カ所に減少させる。
 11年の台風12号に伴う大水害では流域各地で大規模な深層崩壊が発生。段階的に対策を講じてきた。しかし、斜面崩壊地の下流では、流出土砂の堆積により川床が上昇し、治水安全度が低下している状況に変わりはなく、抜本的な土砂流出対策が急務となっている。
 藤田委員長は、「深層崩壊、天然ダムなど、まだまだ紀伊山地には不安定な土砂が堆積している。流域の安全を守るために何が必要なのか。次のステップをどうするのかしっかり議論したい」とあいさつした。
 井上智夫河川部長は、「前回の災害では道路が寸断し多くの集落が孤立化し、対策箇所も多岐にわたった。観光など社会経済的な観点も含めて考えていく必要がある」と述べた。

提供:建通新聞社