東京都が新築する「首都災害医療センター」の基本構想を話し合う有識者会議が10月26日に開かれ、都立広尾病院(渋谷区)の移転計画について、まず災害病院としての機能や役割、特徴、地域との関わりについて検証した上で、新病院の整備計画を再検討すべきだとの認識で一致した。内藤淳病院経営本部長は「この委員会(基本構想検討委員会)の中で新病院の機能、規模、開設時期などを議論してもらい、その結論を反映させる。知事や議会にも理解を求めていく」と述べ、現行計画を見直す可能性に言及した。
首都災害医療センターは、施設の老朽化や新たな医療ニーズへの対応が求められている広尾病院(渋谷区恵比寿2ノ34ノ10)を、都職員共済組合青山病院跡地(渋谷区神宮前5ノ53ノ3、敷地面積約1・7f)とこどもの城跡地(渋谷区神宮前5ノ53ノ1、敷地面積約1f)に移転新築する形で整備する計画。
病床数(478)は変更しないが、1室6床の病室を1室4床に変更するなど医療環境を改善する。基幹災害拠点病院としての機能に加え、スポーツ医学や外国人に対応した医療、さらにNBC(核・生物・化学)テロをはじめとした新たな医療課題にも対応する。2023年度の開設を目指している。
8月末に開かれた検討委員会の初会合では、広尾病院を建て替えではなく移転新築することにした経緯などを求める意見が出たため、今回の会合では都側が検討の経過とその内容を説明。医療機能の在り方に加え、建て替え・全面改修・移転新築の3パターンで課題を抽出・整理した結果、青山への移転新築を最適な案と判断したと説明した。
しかし、委員からは「病床の稼働率が6割程度にとどまっており、病床数を見直すべき」「事業効果が高くても移転新築はコストが掛かる。民間と公的病院の担う役割・機能などを改めて検討・評価すべき」「(開設予定時期である)7年後には周辺にある大規模な民間病院の建て替えなどが完了する。都立病院として災害医療以外の機能をどこまで必要とするのか考えるべき」といった意見が出た。
そこで、移転新築や建て替えといった事業内容の前に、委員会として災害医療センターとしての機能・役割、特徴、地域との関わりなどを改めて検証。その上で、施設整備の方向や内容を検討していくことを決めた。
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建通新聞社