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建設新聞社
2016/10/24

【東北】地域建設業が存続できる工事量確保を/16年度東北建設業協会ブロック会議/東北建協連

 10月24日に山形市で開かれた東北建設業協会連合会(千葉嘉春会長)の2016年度東北建設業協会ブロック会議では、公共事業予算の安定的確保と地域間格差の是正が大きな論点となった。業界側は「地域によっては工事量が激減するなど地域間格差が顕在化し、地域建設業の存続が危惧される」と訴え、地域建設業が存続できる工事量を確保することが必要と指摘。また、地域建設業や公共事業の大切さを社会に知ってもらうため、「見せる建設業」に変革していくことが重要との認識を共有した。
 この会議は、国土交通省や東北地方整備局、東北6県・仙台市などの主要発注機関と東北建協連が、地域建設業を取り巻く課題やその対応策を話し合う場として毎年開催している。今回は議題として@国土強靭化基本計画に基づく計画的な推進と公共事業予算の安定的確保A復旧・復興の着実な推進B改正品確法の適正な運用C適正な利潤確保と生産性向上D担い手確保のための労働環境の整備E地域建設業の戦略的広報―の計6項目を据えた。
 このうち国土強靭化基本計画に基づく計画的な推進と公共事業予算の安定的な確保をめぐっては、「国土強靱化の推進と地域の持続的発展のためには、公共事業予算の増額と安定的な予算確保が必要不可欠」として、国土強靭化基本計画の投資期間を設定した上で、その原資を特定財源化するよう提案。また、「地域によっては工事量が激減するなど地域間格差が顕在化し、地域建設業の存続が危惧される」として、地域の実情に合った公共事業予算の安定的確保とともに、補正予算に頼ることなく当初予算の段階で必要額が確保されるよう、特段の配慮を求めた。
 これに対して国交省は「社会資本の整備や維持管理、災害対応などを担う建設業が中長期的な建設投資の姿を見通せるよう、必要な予算を安定的・持続的に確保する必要がある。このため国交省では2016年度当初予算で前年度を上回る公共事業予算を確保し、17年度概算要求では対前年度比1・16倍を要求している。今後も地域の実情に合った事業実施、予算配分に努めていく」と応じた。
 復旧・復興事業をめぐっては、復興歩掛り、復興係数、労務単価の引き上げ、見積活用方式といった被災地特例の継続や、前払金特例措置の延長などの必要性を強調。台風10号の復旧では、被災地特例と同様の施策を講じることに加え、現場の実態に即した設計変更が円滑に進む環境の整備を訴えた。
 国交省は「復興は今が最盛期であり、引き続き円滑な施工確保対策が必要。復興係数や設計労務単価の引き上げなどについては、工事の支出状況や入札不調の発生状況などの実態調査結果を踏まえて、適切に設定していく」「前払金特例の延長は、要望を踏まえ前向きに検討していく」などと回答した。
 改正品確法の適正な運用に向けては、改正の趣旨や運用指針を自治体まで徹底させるほか、工事品質の確保、労働災害撲滅の観点から調査基準価格のさらなる引き上げを要請。地域間格差の解消も念頭に入れ、公共工事設計労務単価をピークの1998年当時まで戻すとともに、生活給を加味した調査方法への抜本的改善も強く求めた。国交省は「運用指針の趣旨が自治体まで浸透するよう、地域発注者協議会などの場を通じて周知してきた。各ブロックの発注者協議会では、全国統一指標の設定も議論している」などとした。
 また、各自治体からは改正品確法への対応として▽6月に設計変更ガイドラインを策定したほか、発注時期の平準化にも努めている(青森県)▽ことし3月に策定した新・みやぎ建設産業振興プランに基づき、建設産業の担い手確保・育成策を進めていく(宮城県)▽管内市町村の設計変更ガイドライン策定率を本年度末に7割以上とすることを目標として取り組んでいる(秋田県)▽11月から余裕工期制度を試行的に導入していく(山形県)▽公共事業労務費調査では、実物給与も対象とするなど実態に即した調査となるようにしている(福島県)―などが報告された。
 適正な利潤確保と生産性向上に関しては▽発注・施工時期の平準化▽適切な設計変更▽生産性につながるICTの活用―を提案。このうちICTの活用では「初期投資の大きさや、ソフト・ハードの進化の速さなどに不安がある」と指摘した。国交省は「適切な工期設定については、準備・後片付け期間の実態を調査した上で、下半期から一部工種で改定した。他工種も実態調査を踏まえ見直していく」「ICT土工を自治体発注工事にも普及させていきたい」などと答えた。
 担い手確保の観点からは、不稼働日を踏まえた適切な工期設定、日給月給の労働者に対する給与保証などを通じた週休2日制の確保の必要性を指摘するほか、「確保した人材の育成・定着が重要」との観点からニーズに沿った技術・技能習得のための教育訓練機関を各ブロックに1カ所設置するよう要望。さらに建設産業や公共事業の本来の目的を一般に人々に理解してもらうため、業界の継続的なイメージアップやPRに対する助成制度などの支援充実を求めた。

 会議終了後の会見で、全国建設業協会の近藤晴貞会長は「地域建設業の工事量を確保し、地域間格差を埋めていきたいという意見は、各地域の代表から出てきている。地域の安全・安心を担保していくためには、最低でもこれだけの工事量がないと地域の建設業が維持できないということには、国交省も一定の理解を示している。受発注者が互いに真摯に意見を交換できたので、ことしを出発点として議論を深めていけるだろう」との見方を示した。
 千葉会長は「国土強靭化基本計画の具現化と公共事業予算の安定的確保では、地域建設業を維持し得る工事量の確保をお願いした。また、担い手確保・育成が喫緊の課題であり、生産性向上や処遇改善に取り組んでいく必要がある。さらに地域建設業の戦略的広報では、被災地で活躍している姿や社会貢献も打ち出して、『見える建設業』にしていかなければならない」などと全体を総括した。


提供:建設新聞社