日刊建設工業新聞
2016/10/12
【鳥取】JR米子駅南北自由通路整備 市民説明会で理解求める
多くの市民、地元経済界から地域の活性化の起爆剤として期待が寄られているJR米子駅南北自由通路整備事業についての市民説明会が米子市主催により9日午前10時から米子市錦町、ふれあいの里を会場に開かれ、その事業目的や計画概要などについて市民に説明、事業への理解を求めた。また、駅南北を結ぶ自由通路及び駅南広場の事業効果や整備後の米子駅周辺の将来像を考えてもらうべく、地元経済界などから参加してもらいパネルディスカッションも行われた。
第一部の事業計画説明では従来から報じている内容が説明され、駅南北自由通路、駅南広場などを整備することで交通結節点としての機能強化による都市交通の円滑化や駅南の利便性を向上させることで市の玄関口にふさわしい都市環境を創出するーとした。その中では自由通路は都市計画道路として、駅南広場は都市計画道路の市道米子駅目久美町線の交通広場との位置づけで都市計画決定を行う考としたほか、「事業完了後に自転車の押し引き通行を試験検証し、安全確保が確認されれば歩行者だけでなく、自転車の押し引き通行も許可する」との考えも示した。
ひと通りの説明の後、市民からの質疑応答も設けられたが、その中では「総額60億円とされる事業費の費用対効果をどう見ているのか」「話が出てから約20年経過した中で、平成25年に野坂市長が整備着手の方針を示したが、その間に改めて市民ニーズなどの調査はしたのか」「市の玄関にふさわしい都市空間とは、どういうものを想定しているのか」などあったが、その中心には、市民に対する丁寧な説明と市の玄関にふさわしいものにするためには、JR任せではない、コンペやプロポーザルなどを活用し、なお且つ市民を巻き込んだ形で、市民意見の設計への反映など求めるものだった。
第二部では市の細川庸一郎建設部長をコーディネーターに、伊木隆司氏(米子商工会議所青年部直前会長)、高増佳子氏(米子工業高等専門学校建築学科准教授)、青砥隆志氏(米子信用金庫理事長)、中山貴雄氏(県西部総合事務所長)をパネラーとして、それぞれが駅南北自由通路・駅南広場を今後の街づくりに生かすにはどうすれば良いのか、またその必要性や期待感を語った。
その中で高増氏は先進地事例として北海道岩見沢の複合駅舎や山口県の徳山駅新駅ビルを取り上げ、そのデザイン性や利活用を披歴し「米子駅に関しても外部有識者を含め市民を巻き込んだ広い議論で、設計者もコンペかプロポーザルで決めてほしい。より優れた案を集め、市民が納得できるデザイン、全体を俯瞰(ふかん)してトータルデザイン」を求めた。
伊木氏は「現状の目久美町を駅裏と呼ぶこと自体、いかに街づくりが完成していないのかを象徴している」とし、「中心市街地が衰退の一途から立ち直るには交通アクセスに着眼しなければならない。公共交通の利便性を高めることが街づくりの重要な視点になる。そしてそのことは街の活性化というだけでなく、交通弱者にとっても重要だと考える」と、その必要性、重要性を指摘した。
経済界を代表する形となった青砥氏は「自由通路が完成すれば駅前の再開発問題などすべてが解決するわけではない。できれば駅前の再開発が決まってからこれを計画するというのが正論だが、現実的には、まず一歩踏み出すことで、その引き金を引くという意味もあるのではないか」とし、「この問題をこれ以上先延ばしすることが、この地域にとって果たして良いことなのかを考えなければならない」と指摘した。また、民間都市開発機構など外部団体からの出資や地域の金融機関などとの連携する形での都市再開発を成功させている事例なども紹介した。
中山氏は「ターミナル機能が集まっているのが米子駅。開かれた交通路として今後さらに利用されるのではないか。それによって米子駅の利用も広がると考える」とし、鳥取駅の高架事業を振り返り「駅高架が出来るまでは、今の目久美町のように駅裏という表現されていた」とも紹介した。
[JR米子駅南北自由通路整備事業]
▽自由通路=延長約130b(線路上空は延長105b)、幅員6b。駅南広場面積約5500平方b。
▽概算事業費=約60億円。内訳は自由通路工事費約24億円、駅南広場工事費約2億円、測量・設計費約3億円、補償費(駅舎整備や支社ビル移転など)約29億円、用地費約2億円。
今後のスケジュールは2016年度に補償本調査、都市計画決定など行い、17年度に詳細設計(JRへ委託)、18年度からの工事着手(JRへ委託)を目指す。ちなみに、年内にもJR西日本から支社ビル建設位置が示される見通しとされている。