東京都の小池百合子知事は9月28日、2016年第3回都議会定例会の開会に当たって所信表明を行い、「都自らが見える化を徹底し、これまでの延長線上ではない改革を不断に進めることで都民の信頼を再び取り戻さなければならない」と都政運営に対する決意を述べた。また、持続可能な首都・東京をつくり上げるための目標として「セーフシティー、ダイバーシティー、スマートシティー」の三つを掲げ、待機児童対策や沿道建築物の耐震化、無電柱化、多摩・島しょ振興などに重点的に取り組む考えを示した。 小池知事は冒頭、豊洲市場の移転問題に触れ、「失った都民の信頼を回復するため、責任の所在を明らかにし、原因を探求する義務がある」「組織全体の体質や決定の方法に問題があるならば、それを変えなければならない。新たな都政に対する期待に大転換するチャンスとしたい」と訴え、都民利益が最大化するような議論を交わすよう都議会に訴えた。その上で、専門家によるプロジェクトチームでの検証結果を基に、「オリンピック・パラリンピックの成功に影響を及ぼさない対応や市場関係者への配慮など今後の措置をしっかりと判断していく」と述べた。 持続可能な東京に向けた取り組みでは、まず、ダイバーシティーを実現するため、待機児童対策を展開し、保育施設を拡充させる。高齢者が住み慣れた自宅や地域で暮らせるよう、介護サービス基盤の整備や人材の確保・定着にも重点を置く。 安全・安心・元気なセーフシティーについては、自らの阪神・淡路大震災の経験を踏まえ、「耐震化や不燃化が東京の喫緊の課題」だと指摘。緊急輸送道路沿道建築物の耐震化や、木造住宅密集地域にある家屋の不燃化建て替えと生活道の拡幅工事を同時並行で支援するとした。さらに、「強力に進めるべきは道路の無電柱化だ。その意義や効果を都民に広く理解してもらい、推進に向けた大きなうねりを起こす。事業者間の競争やイノベーションにつなげることで、課題であるコストも縮減したい」と述べた。 多摩・島しょの振興に関しては、「自然を守りつつ、南北・東西を結ぶ骨格幹線道路や三つの環状道路の整備を行うことで、新たな産業やサービスの創出につなげていく」とした。 スマートシティーの実現では、「今後の成長分野の発展に向けたタイムリーな戦略を果敢に展開しなければならない」と指摘。環境技術のさらなるイノベーションや環境配慮型ビジネスモデルへの意識改革、リノベーションによる都市の高効率・省エネ化、再生可能エネルギー・自立分散型電源の導入拡大などに取り組む姿勢を示した。 東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会に関しては、「ハード面だけでなくソフト面のレガシーを構築する」と語り、「施設整備や開催経費などについて、国や組織委員会と緊密に連携し、説明責任を果たしながら解決方法を見いだし、都民の理解を得たい」との意向を示した。
提供:建通新聞社