福島建設工業新聞社
2016/09/08
【福島】新エネ社会先駆けの地へ構想決定
第3回福島新エネ社会構想実現会議(議長・日下部聡資源エネルギー庁長官)が7日、福島市のザ・セレクトン福島で開かれ、福島を再生可能エネルギーや水素など新エネルギー先駆けの地とするため、国、県、関連企業が一丸となって取り組む同構想を取りまとめた。再エネ導入拡大へ向けて、送電線の増強や電力系統制約の改善に努めるほか、1万kW級大規模水素の製造・有効活用に向けて、今年度中に実証の検討会を立ち上げ、32年までに運転開始することを明記した。
構想取りまとめ後、高木陽介経済産業副大臣は「構想は福島の力強い復興、未来への道しるべになる」と述べ、予算の確保と構想実現に努力する方針を示した。
同構想は「再エネの導入拡大」「水素社会実現に向けたモデル構築」「スマートコミュニティの構築」を柱として、平成32年、42年、52年ごろをめどとする3つのフェーズを設定し、各フェーズで目指す姿を明示した。
再エネに関しては、導入拡大へ向けて送電線を増強する。風力・太陽光発電の事業者と東京電力・東北電力が、阿武隈山地や本県沿岸部への導入拡大へ新たな事業体を設立し、効率的な送電線の整備を進める。経済産業省と県は今年度、事業ポテンシャルの把握調査と送電線敷設の事業可能性調査を実施。電力系統制約の改善では、東北電力、経産省、県が設備認定の取り消しに基づく接続契約の解消を進める。
水素社会の実現に向けては、経産省が民間事業者と連携し、再エネを用いた大規模水素製造(1万kW級)や輸送・貯蔵技術を組み合わせ、製造した水素を有効活用するためのシステム構築を県内で実証する。同省と県で今年度中に検討会を立ち上げる。システム実証で得られた水素は、東京に輸送する実証を行い、東京オリンピック・パラリンピック競技大会中、水素ステーションなどで活用することを検討する。
また、経産省は29年度、これまで4大都市圏を対象としてきた商用水素ステーションの整備対象地域に本県を追加。経産、環境両省と県が、県内への整備を推進する計画だ。
スマートコミュニティの構築に向けては、事業計画策定中の新地町、相馬市、浪江町、楢葉町の事業を加速。4市町以外でも取り組みを支援する。
構想の実現に当たっては、同会議構成員が中心となり、基盤となる再エネ発電設備、新エネ関連工場、実験施設や研究所を県内に積極的に整備することを明記。関係省庁は必要な財政措置に努めることとした。
同日の会議では、29年度概算要求に、同構想関係の県内実施事業で160・3億円(@再エネ導入促進支援事業補助金100億円A福島沖浮体式洋上風力発電システム実証研究事業委託費24億円B福島再生可能エネルギー研究開発拠点機能強化事業10・8億円C放射性物質対処型林業再生対策25・5億円)を盛り込んだことを報告。また593・8億円の内数で、同構想関係事業を優先採択する見通しも示された。