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日本工業経済新聞社(群馬)
2016/08/26

【群馬】富岡製糸場「西置繭所」公開活用の整備方針公表と関連工事予定

富岡市は世界遺産富岡製糸場の「西置繭所」保存修理・耐震補強・公開活用に向けた整備方針を明らかにした。2014〜19年度までで、概算事業費は33億6000万円。本年度は、文化庁から9月か11月に交付される補助金を基に関連工事を随意契約で発注する見通しだ。このほか富岡製糸場関連では、10月以降に南面崩落対策工事や乾燥場などの保存整備工事、11月以降に「社宅76」の保存整備工事を発注する見通し。指名競争か随意契約かは検討中だが、なるべく地元業者に発注したい考えだ。
西置繭所は建設から140年以上が経過しており、保存修理が必要な状態。2014年度から素屋根の設置や調査解体工事などを竹中工務店(大阪府大阪市)・タルヤ建設(富岡市)JVが行ってきた。
現在、一部先行して本格的な保存修理を行うための組立準備工事を随意契約で同JVに発注。1月中の完成を目指して工事を進める。今後、9月か11月に交付される文化庁からの補助金を基に保存・修理に着手する見通し。同時期に工事設計監理業務も委託される予定。工事は2カ年を予定する。
すでに工事費の一部は発注されているが、当初予算には工事費2億1838万7000円、工事設計監理業務委託料4360万円を計上した。西置繭所ではこのほか耐震設計業務委託料2291万円と総合防災計画基本設計業務委託料1500万円を割り当てた。総合防災計画基本設計はすでに発注済みで、17年度には同詳細設計業務を委託する。耐震設計は補助金の交付が決まる9月か11月ごろに随意契約で発注する。
保存修理は本年度、れんが壁の補修をメーンに行い、来年度に耐震補強工事を進める。保存修理の整備方針では、製糸の技術革新で生糸の生産量が最大となった1974年ごろの状態に復元。製糸システムと関連の薄い1階東側にあるれんが壁を撤去し、現存する木製建具を見られるように整備する。耐震補強は建物外観への影響を最小限に抑え、将来的に取り外せる素材・工法を採用。1階は鉄骨フレームで補強し透明な素材で仕切り、空間の広さを損なわないように整備する。2階部分は過度な負荷がかからないないように木骨フレームを設置。筋違いは鉄筋か炭素繊維などを利用する方向で検討している。
18年度以降は公開に向けて建具や床、内装などの整備や火災に備えた防災銃などを設置する防災工事を進める。
公開活用に向けた整備では、内装にギャラリーやホール、ホワイエ、エレベーター、トイレ、階段の新設などを計画する。ギャラリーでは資料の展示や歴史と価値を伝承するために収蔵庫としての機能も兼ねる予定。ホールでは講演会や会議、ワークショップの開催のほか、コンサートや演劇など多目的な利用もできるように整備する方針だ。
富岡製糸場関連ではこのほか、10月以降に南面崩落対策工事と乾燥場などの保存整備工事・工事設計監理業務、「社宅85・86」保存調査業務を委託、11月以降に「社宅76」の保存整備工事と工事設計監理業務を発注する。
本年度当初予算には「社宅76」の工事費8000万円、工事設計監理業務委託料1200万円、南面崩落対策の工事費3000万円、乾燥場などの工事費8737万2000円、工事設計監理業務委託料3646万1000円、「社宅85・86」調査委託料1000万円を計上している。
「社宅76」では、柱や梁などの骨組みを残した解体と調査を行う。建築面積は219・5u。
南面崩落対策工事では、モルタル吹付枠工(A130u)と鉄筋挿入工(77本)を予定する。
乾燥場では、素屋根建設と建屋の調査・解体、木材加工繕(新材・再用材)などを見込む。