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西日本建設新聞社
2016/08/22

【熊本】「建設は技術的に十分可能」 立野ダム技術検討委が結論

 九州地方整備局は17日KKRホテルで、立野ダムの技術的な確認・評価を行う第3回技術検討委員会(委員長・足立紀尚地域地盤環境研究所代表理事)を開いた。委員会はダム機能の維持や湛水予定地周辺の状況を技術的に確認し、地震後の状況を踏まえた上で、流木や巨石などが洪水調節能力に影響を及ぼさないと評価。湛水の影響を受ける16カ所の斜面についても必要に応じて対策工を実施することで安全性は確保できるとし、ダム建設に支障となる課題はなく「技術的に建設可能」と結論づけた。
 今回の検討課題のうち、ダム機能維持では地震後の総貯水容量や流木・巨石の放流孔に対する影響を確認・評価。総貯水容量については、航空レーザ測量結果から、6月の洪水後にダム湛水予定地には約50万立方bの土砂が堆積していると推定。100年後の平衡堆砂量を30万立方b超過しているが、ダム完成時までに約30万立方bを掘削すれば必要容量を十分に確保できるとした。
 流木・巨石対策については、ダム放流孔(5b×5b)が閉塞しないように呑口部にスクリーンの設置を計画。更なる安全対策として、予定地の約200b上流に流木や巨石を補足する施設(スリットダム)を設置することで、閉塞が生じず洪水調節能力に影響はないと判断した。ただし、ダム完成後も流木や巨石などの状況をモニタリングし、必要に応じて流木・巨石の撤去など適切な維持管理が重要となる考えを示した。
 湛水予定地周辺の斜面については、航空レーザ測量により、現地踏査対象斜面として16カ所(地すべり状地形6カ所、崖錐斜面10カ所)を抽出。今後、地形判読、現地踏査などを実施し、必要に応じて対策工を実施することで安全性を確保する方針で、足立委員長は「ダム完成予定の平成34年までにしっかりとやってほしい」と念を押した。


委員会後に会見「十分に確認・評価した」

 立野ダム建設に関する3回目の技術委員会を終え、足立委員長をはじめ、角哲也委員(京都大学防災研究所教授)や九地整河川部の永松義敬河川調査官が記者会見に応じた。

――計3回の委員会を通しての感想は
 足立委員長 ダム建設に関しては、地震の前から長い間検討されてきた。この委員会の目的は、地震が発生したことで何が起こったかを含めて再度検討すること。課題となる六つの項目(断層、基礎岩盤、総貯水量、流木、巨石、湛水の影響を受ける斜面)について、各専門家に集まって頂き、技術的な面で課題に対する確認と評価を十分にしたと思っている。
 角委員 立野ダムは流水型ダムという特徴を持っており、通常の貯留型ダムとの違いを良く理解することが大事。このような技術検討会で、あらためて課題を整理し、流水型ダムに対して理解が進んだということを期待している。
 山の状態は変化する。流木や土砂など今後どうなっていくのか、これを機に色々な関係機関と連携して、データを取りながら今後の知見として蓄積していくことが大事となる。

――流水型のダムなので、湛水予定地に堆積した土砂は自然に流れるのに、30万立方bも掘削する必要はあるのか
 角委員 土砂が溜まった状態では、工事が出来ないので、ダムの工事サイトを確保するためにある程度の土砂は掘削が必要となる。速やかに30万立方bを掘削するのではなく、これからの動態を見ていく中で判断すればいいと思っている。
 永松河川調査官 6年後にダムが完成する予定で、たとえば完成から1年目に大きな洪水が発生した時でもダム機能を発揮するために平衡堆砂量となる20万立方bぐらいまでにしておかないと対応できない。
 ダムの基礎工事の過程で土砂を掘削したり、雨が降れば当然土砂は流れるので、状況を見て最終的にどのくらい掘削すればいいのか判断していきたい。
 
――ダム本体の着工時期は
 永松河川調査官 仮排水トンネルの入り口が土砂で塞がっており、左岸側に取り付く工事用道路などを含めて復旧しなければならない。ダム完成のスケジュールは現時点で変更はないが、復旧状況を見極めながら着工時期を判断してきたい。

提供:西日本建設新聞社