飛騨市政の新たなかじ取りに就任し4カ月がたった。応援から厳しい意見まで、市民の真の声を真摯(しんし)に受け止め、この距離感が面白くて仕方がない≠ニ語る都竹淳也市長。6月の肉付け予算では、市が管理する施設の総合管理計画の策定費などを計上した。これまで建設の分野に縁がなかったが、まちを形成するための基幹産業である建設業への思いは高まる。そこで、吉城建設業協会の田近正英理事長とこれからの市政運営や地元建設業との関わりなどについて対談してもらった。(司会=岐阜支局村松衡)
――市長就任後の思いを。
都竹「4カ月が過ぎ、飛騨市の魅力と可能性を改めて感じている。この市の規模では、市民との距離が近くダイレクトに意見や要望が入ってくる。これは新鮮な驚きだし、市民の表情が分かる分、その対応や対策を考えることが市政運営へのモチベーションになる」
「また、地域を支える産業である建設業との関わりも近い位置で感じてみたいことの一つだ。地域間の情報や流通を支える事業に深く関わる建設業は総合産業と認識しており、コミュニティーとしての役割も担う裾の広さを強く感じている」
田近「構造物の建設においても資材や備品、建設機械修理など、さまざまな分野の企業と関わりがなくては始まらない。そうした意味では一つの公共工事から生まれる建設業と他企業とのコミュニティーは強いものがある」
――6月には肉付けの補正予算も発表された。2016年度の事業について伺いたい。
都竹「福祉を重要なテーマにしている。本年度は国の交付金がうまく採択されず、市単独での事業も制限されてくる中、池ケ原湿原の木道整備に伴ってバリアフリーの散策路を設置する予算を計上した。さらに、今後も飛騨市の観光スポットにおけるバリアフリー化整備を重点的に考えている。また、神岡町の宙(スカイ)ドームの整備やインフラの長寿命化に向けた計画策定などにも予算を計上している」
田近「ピーク時に比べると、やはり公共工事の発注は少ないという印象は否めない。国の補助などの絡みもあるが、工事発注の平準化が望ましい。また、地元企業に若い世代が就職し、安定した就業形態を確保するためにも、安定した工事発注のために事業の継続化が重要だと思う」
――安定発注については。
都竹「安定的な工事発注は、雇用などの問題にとっても重要な課題だと感じており、県とも議論していく考えだ。一方で財政余力も重要なファクターとなってくる。地方交付税の配分に期待しつつ、秋までに各事業に対する目標値を定めて方針を打ち出したい」
田近「安定的な工事の確保としては、公共施設の長寿命化で補強や補修、修繕など必要な工事が山積している。これを押し迫って一気に出すのではなく、順次進めていくことをお願いしたい」
都竹「本年度予算には道路や橋梁、建物などの長寿命化計画に対する調査費を計上した。よりリアルな概算費を算出し、現実的な予算を配分していく考えだ」
――次期担い手の確保に向けては。
田近「飛騨地域に限らず、非常に難しい問題だ。協会では即戦力に一番近い高校生を対象にリーフレットを作成し配布している。そこには、先輩方が建設業に就職してからの仕事内容などの近況のコメントを付けた。こういったPRが次世代の就職意欲の向上につながってほしい」
「若手従業員の中には、地図に残る仕事がしたい≠ニ語るものもいる。そういった夢を持った生の声を高校生らに伝えられたら、興味を持ってもらえるかもしれない」
都竹「担い手確保は、建設業だけにはとどまらない大きなテーマだ。市としても地元企業の魅力発信について、予算化している。丁寧に企業の取材をし、各企業の魅力ややりがいを存分に発信する手助けができればと思っている」
田近「建設業における新たな3Kをご存知だろうか。今の若い世代は『勤務地』『給与』『休日』を重視するという。建設業においては、これをクリアする体制を構築するための道のりは険しい。むしろ、そうした意識をやりがい≠ネどといった方向に改革していくことを重視した方が現実的な気がする」
「建設業にベクトルを合わせ入職し、自分の目指す方向をしっかり見据えることができる。そういう若者を支え、やりがい≠見つけられる環境を作り上げておくのがわれわれの使命だと受け止めている」
――協力体制の取り組みは。
都竹「08年に災害応援協力に対する協定を結んでいるところではあるが、今後も安定的にパートナーシップの体制が維持できるための在り方も考える必要があると思っている」
田近「緊急応援隊として各地域に班を組織しているため、災害発生時の地域拠点となる支所はぜひ残していただきたい」
都竹「市民との連携、協働という部分も重視したい。道路など市民が発見した修繕箇所などについてもより一層迅速に対応する体制を構築しなければならない」
「さらに飛騨市の未来を形成するため、建設業とのパートナーシップも深みを持たせたい。そのためにも現場≠見る機会をつくっていただければと思う」
田近「じかに現場を見てもらうことは、業界を深く理解してもらうためにも重要だと思う。今夏中に協会として詳細を協議し市長との現場見学会を現実化する。これからも、パートナーとして連携を深めていきたい」
提供:
建通新聞社