三重県公共事業評価審査委員会(委員長・安食和宏三重大学人文学部教授)は津市内で、2016年度第1回会議を開き、再評価審査対象事業として長島地区海岸など2事業の海岸高潮対策事業を審査した。審査結果は2事業ともに事業の継続を了承した。審査後、次回会議で審査する再評価対象の3件の道路事業の概要を説明した。
再評価審査対象事業として審査された各事業の概要などは次の通り。
〈長島地区海岸・海岸高潮対策事業〉
長島地区海岸・海岸高潮対策事業の対象となる長島地区は、木曽川・揖斐川に挟まれた海抜ゼロメートル地帯で内閣府が南海トラフ地震防災対策推進地域として指定した地区。地震による液状化の危険性が高いことから堤防の補強を行う。液状化対策として工法の比較検討を行った結果、鋼矢板を堤防の前後に打ち込む鋼材工法を選定し、堤防下の土の流出を防止する。併せて、堤防に波返しを施し、津波の越流を抑える。
全体計画は、07年度から17年度までの事業期間、全体事業費は43億1900万円。工事概要は、全体延長が2562bで、内訳は耐震補強(堤内)が延長1164b、耐震補強(堤外)が延長1398b。波返し工が延長1398b。15年度末までに、耐震補強(堤内)が延長684b、耐震補強(堤外)が延長1398b、波返し工が延長938bの整備を終えた。事業費は約36億3800万円を投入し、事業費ベースでは84%の進捗率となった。
今後は16年度に、耐震補強(堤内)が延長260b、17年度に、耐震補強(堤内)が延長220b、波返し工が延長460bを整備し、事業を完了する予定。残事業費は6億8000万円。
07年度に採択され、10年が経過し、継続中の事業であることから再評価の対象とした。費用対効果分析は、9・6。県側は、地元の意向や事業進捗などを踏まえて同事業の継続を求めた。
審議では、委員から「鋼矢板による液状化対策の効果について」の質疑があり、県側は「東日本大震災での実績をフィードバックしている」と根拠などを説明した。
〈長島港海岸・海岸高潮対策事業〉
長島港海岸・海岸高潮対策事業は、紀北町北部の熊野灘沿岸の既設護岸・堤防を補強改良するもので、1990年度から24年度までの事業期間、全体事業費は39億9000万円。
3地区に分けて整備しており、中央に当たる西長島地区は堤防補強が計画延長743b、陸閘(こう)改良2基が計画され、10年度までに整備済み。東側の呼崎名倉地区は堤防補強・改良が計画延長1030b、離岸堤が延長300bで13年度までに整備済み。
西側の中ノ島地区が今後の整備地区で、前出し護岸による護岸補強の計画延長が1180bで、15年度までに693bが整備済みで事業費ベースで60%の進捗率となっている。同地区については、湾奥部の整備を13年度より再開しており、24年度の完成を目指す。残事業は延長487b、残事業費は8億1659万円。
3地区を合わせた施工済み額は31億7381万円で、進捗率は79・5%となった。
費用対効果分析では、中ノ島地区が21で、5年前の23・4から若干低下した。これは、最新の地盤データで更新した結果、浸水エリア、浸水深さが変更したためとした。
11年度に再評価を実施し、一定期間である5年が経過したことから再評価の対象とした。
県側は、該当地区の防護の必要性などから同事業の継続を求めた。
審議では、委員から「高潮対策を前提とした費用対効果分析となっているが、津波対策をどのように考えているのか」など、津波被害に対しての質疑があり、県側は「津波が堤防を越流しても壊れない、あるいは、壊れるまでに時間がかかるように粘り強い構造に補強することで、住民が避難する時間を確保する考えで堤防整備を行っている」と説明し、「従来の基準で整備した堤防についても補強をしていく」との考えを示した。
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建通新聞社