三重県は今後の県財政の健全化に向けた具体的な方策について、県行財政改革推進本部に設置したワーキング・グループで検討を進めている。中間取りまとめとして公表した「財政の健全化に向けた集中取組について」では、歳入不足が今後予測される中、歳出面に占める補修・更新経費の増加が見込まれることから、インフラの長寿命化の対策を求める一方、県有施設のハコ物の新築事業を見合わせるなど公共事業を抑制する方針も示されている。
県財政を歳入面で見ると、県税収入が一定度伸びてきたものの地方交付税が減額されたことで収入総額は微増となっている。歳出の伸びを補うための土地開発基金などの取り崩しも尽きてきたため、2016年度当初予算では企業会計から借り入れるという異例の手段を講じている。歳出面では、社会保障関係経費の増加、公債費の増加など構造的な要因とともに災害復旧や経済対策への対応など必要な投資を実施してきたため、今後の新規需要などへ対応が困難な状況にあるとしている。
県財政の健全化に向けた重点的な取り組みのうち、県有資産関係、公共事業関連は次の通り。
〈歳入面〉
歳入面では、県税収入の確保、財産の有効活用・未利用財産の売却促進、使用料などの見直しの3項目を挙げた。
特に、財産の有効活用・未利用財産の売却促進を見ると、実績として、06年度から15年度の10年間で未利用などの売却で約24億円の売却収入を上げている。16年度時点の個別財産の利活用計画では、売却予定財産が約9・3億円(時価評価額)、利活用を検討する財産が約27・1億円(公有財産台帳価格)となっている。取り組みとして、売却予定財産については、不動産関係事業者らへの売却情報の早期の提供、また、入札の結果で不落になった物件について先着順を採用するなど新たな売却手法を検討する。
〈歳出面〉
◇公債費・投資的経費の抑制
投資的経費は、1200億円台から1300億円台で推移してきたが、14年度は1100億円台に減少している。
公共事業(普通建設事業)の財源として充てた地方債の残高は、02年度を100とすると、以降94〜102%の間で推移し、14年度は98%と横ばい状態が続き、返済に当たる公債費の負担が軽減されていない現状がある。全国平均が80%程度まで減少していることから全国的には起債を控えていた経緯がうかがえる。
同県の維持補修費は、14年度決算で53億円となっており、今後も同程度の施設を維持していくためには、今後40年間にわたり、現状よりも81億円高い水準が続くと試算されている。
今後の取り組みとして、県債発行に直結する投資的経費については、財政状況が好転するまでは抑制する。施設の老朽化に伴う補修・更新経費の増加が見込まれ、財源を振り向けざるを得ないことから、既存インフラの長寿命化を図る。
県有施設(ハコ物)については、原則として新たなものの着手を見合わせることとし、今後、新設または建て替えを行う場合は、既存施設の有効活用なども検討することとした。
◇県単独補助金の見直しなど
新規の補助金については、当分の間、最大の補助率割合を3分の1とする。政策誘導など必要な事業については、2分の1(期限付き)とすることができる。市町や団体に対する県単補助金の中で、国の補助金と重なる事業は見直しを行う。
予算編成に当たっては、大規模臨時的経費についても優先度判断の手法を導入し、事業の選択と集中を図る。特定政策課題枠についても、真に必要なものに絞り込むこととした。
提供:
建通新聞社