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西日本建設新聞社
2016/07/28

【熊本】連載「熊本地震〜復興の槌音〜I」 3カ月後の被災現場〈下〉

 甚大な被害が発生した村道栃の木〜立野線と県道熊本高森線は、発災1カ月後に国による直轄代行が決まった。両ルートとも橋梁などの構造物のダメージが著しく、現在も通行不能のままだ。15日の現場視察では、立入規制が敷かれている現場に足を踏み入れることができた。

 報道関係者が乗り合わせたバスは、阿蘇大橋地区を離れてすぐ、国道57号の立野交差点から村道栃の木〜立野線の入口に到着。地震後、緊急的に整備された工事用道路を約300bほど歩くと、黒川に架かる長陽大橋や戸下大橋を見渡せる高台まで辿り着く。そこには風光明媚な阿蘇の景色はなく、対岸の斜面の土砂が至る所で崩壊し、目を覆いたくなる光景が広がっていた。
 長陽大橋は、立野側で地滑りによって橋台が沈下し、約2bの段差が生じている。隣接する戸下大橋も斜面の崖崩れで一部が崩落していた。
 既に復旧に向けて動き出しており、6月頃から藤本建設工業と南陽建設が全線にわたって法面・崩土処理などの応急復旧工事を進めている。長陽大橋は落橋せずに残っており、阿蘇大橋を含む325号の代替えルートにもなるため、早期復旧への期待値は高い。
 現在、立野地区から高森方面へのアクセスルートが絶たれているため、次の視察場所となる県道熊本高森線の俵山トンネルまでは、大津町のミルクロード入口交差点まで一度戻る必要があった。そこからミルクロードを経て再び阿蘇市に入り、南阿蘇方面へ抜ける迂回路を1時間かけて通った。
 南阿蘇村側から南阿蘇トンネルを抜けて俵山トンネルへと入り、400bほど進んだ坑内でバスが止まった。その先には厚さ約30aのコンクリートが天井から剥げ落ち、行く手を阻んでいた。南阿蘇トンネルはクラック程度の被害だったのに対し、俵山トンネルは、覆工コンクリートの崩落が7カ所、道路部のコンクリートが隆起する盤ぶくれが2カ所も発生している。傷んだコンクリートを重機で剥がす作業を鹿島・杉本JVの施工で15日から開始し、危険と隣り合わせの作業を進めていた。
九州地方整備局によると、俵山トンネルを含む県道熊本高森線は、一部旧道(村道)を活用する形で、年内にも仮復旧ルートを開通させる見通しを立てている。後日、トンネルの作業動画を弊社フェイスブックに投稿すると、2日間で2万件を超えるアクセスがあり、反響の大きさが伺える。中には南阿蘇村在住の方から「希望の光が見えた」とのコメントもあった。
 今回視察した阿蘇地域を含め、県内各地の被災現場では、危険な場所にもかかわらず、命がけで復興を支える建設業の姿がある。

提供:西日本建設新聞社