海部郡3町(牟岐町、美波町、海陽町)の新たなまちづくり計画の策定を議論する「海部の未来・まちづくり懇談会」(座長・山中英生徳島大学大学院教授)の初会合が20日、美波町の徳島県南部総合県民局美波庁舎で開かれた。事業化を進めている阿南安芸自動車道(海部道路)を見据え、同道路と一体となった安全・安心の確保や少子高齢化といった過疎化対策を図り、人口増や雇用の創出などを実現する持続可能なまちづくりを目指していく。9月までの検討取りまとめを予定している。
懇談会には山中座長をはじめ、海部郡3町長、国道交通省徳島河川国道事務所、県県土整備部、地元経済界などから13人が参加。海部道路の取り組み状況や3町のまちづくりの現状を確認したほか、地元経済界の関係者や他県から移住した町民などから意見・要望を聞き、3町の魅力や課題などを整理した。
事務局は県県土整備部高規格道路課。懇談会を前に原一郎県土整備部長は「この地域は自然豊かで農林水産物や観光資源に恵まれるなど、ポテンシャルは高いものの、少子高齢化が進み、人口減少が深刻となっている。加えて南海トラフ巨大地震の津波被害に備えた高規格道路など、インフラ整備の遅れも課題となっており、こうしたインフラ整備と一体となった持続可能なまちづくりが求められている」とした上で「海部道路は事業化の前段階にようやくたどり着いたところ。命の道、活力の道として重要な役割を果たせるよう、道路と一体となったまちづくりをとりまとめたい」などとあいさつした。
早期事業化が求められている阿南安芸自動車道(牟岐〜野根間約24`)では、昨年4月に対応方針(ルート帯やインターチェンジ位置などの案)が示された。対応方針では、津波発生時に国道55号の代替えのほか、円滑な救命・救助活動のアクセス確保や地域の医療・産業・観光振興の活性化を支援する自動車専用道路とする一方、地域防災公園などとの連絡方法について、国・県・町が連携して検討することとしている。
3町のうち海陽町では、南海トラフ巨大地震による津波被害で孤立化が懸念される地域ごとに、避難所機能や応急仮設住宅の建設候補地などとなる防災公園の整備の必要性を確認。海部道路からアクセス可能な箇所での災害時の各種活動拠点の整備が求められているとし、整備候補地などの検討を進めている。海部道路の事業化にはこうした取り組みのほかに、ストック効果の観点からより活性化できるまちづくり計画が求められている。
提供:建通新聞社