日本工業経済新聞社(群馬)
2016/07/20
【群馬】6割の企業が限界工事量下回る
群馬県建設業協会(青柳剛会長)は20日、約6割の会員企業の2015年度公共工事受注実績が、限界工事量(道路除雪などの災害対応に必要な工事量)を下回っている実態を明らかにした。同協会のアンケート調査で判明した。3割超の企業は限界工事量に対し、25%以上不足するなど深刻な事態も浮き彫りになった。同協会は「限界工事量まで工事量の充当が必要。災害対応の観点から、もう一度地方の建設業を見直す必要がある」と建設業本業の安定の必要性を訴えた。
アンケートは道路除雪を行う会員277社を対象に実施。251社から回答を得た。回答社全体で2493人の人員と、除雪機械550台を準備して道路除雪に備えた。人員は県内11消防本部の消防職員数に相当する。
除雪体制を維持していく上での問題点には、156社(62%)が「工事量受注減による建設業本業の体力低下」、151社(60%)は「除雪作業員の高齢化、後継者の育成、除雪作業員の不足」を挙げた。
除雪体制維持のための15年度公共工事受注実績が何%不足していたかとの問いには、80社(32%)が25%以上と回答した。同様に20%としたのは39社(15%)、15%は16社(6%)、10%は12社(5%)、5%は2社(1%)だった。限界工事量を下回った企業は計149社で、その割合(限界度数)は59%に上る。
限界度数を地域別に見ると、富岡が100%、渋川と藤岡が71%に上り、最も低い桐生でも42%を数える。このままの状況が続けば、県下全域で今後、除雪などの自然災害への対応に悪影響が出てくる可能性が見て取れる。道路除雪は地域の建設業者が地元の路線を分担して行う。1社でも脱落すると、その分は残った業者にまわり負担が増えてしまう関係にある。
こうした状況を踏まえ、同協会は「約6割の業者が受注不足を訴えていることは、除雪体制維持が危機的状況にあることを意味している」と危機感をあらわにするとともに「体制維持には地域建設業の体力維持が必要」「限界工事量までの工事量充当が必要」などとする提言をまとめた。同日開かれた国土交通省関東地方整備局や県との意見交換会でも提言を発表した。今後は自民党本部などにも要望していく。
青柳会長は記者会見で「災害対応の観点から、もう一度地方の建設業を見直すことが必要。今のままでは災害対応がどんどん厳しくなる。地方建設業の人的余力はまだまだある」とした上で「災害対応は建設業のネットワークでできている。どこかが欠けると全体が崩壊してしまう。災害の尺度で地方の建設業の在り方を論じることが必要だ」と訴えた。また「各県でもこうした調査をしてみたらいいのではないか」と全国的に調査が波及することも期待した。