県 工期2025年度まで延長 本年度はダム下流施設の調査・実施設計を予定 浦上ダムの建設事業を進める県は、事業費を70億円増額した上で、工期を2025年度まで延長する計画だ。貯水池の掘削方法の変更などが主な理由。来年度までは調査・設計などを引き続き進める計画で、本年度はダム下流施設の調査や実施設計を予定している。
浦上ダム(昭和町2丁目)の建設事業は、長崎大水害を契機に進められてきた「長崎水害緊急ダム事業」の一環として実施。これまでに西山ダム、中尾ダム、本河内(高部・底部)ダムの整備を進めており(事業進捗率74・7%)、浦上ダムが同事業に基づく最後の整備になる。
浦上ダムの事業は、既設の利水ダムに治水機能を付加するもの。1945年に完成した重力式コンクリートダムを30a嵩上げするとともに貯水池を掘削し、総貯水容量を190万立方bから249万立方bに増やす。貯水池の掘削に当たっては当初、湛水状態での浚渫を予定していたが、上水道用である貯水池の濁水対策として、貯水池を上下流に仮締切して、段階的に水を抜いて施工(ドライ掘削)する手法に変更することにした。
掘削方法の変更に伴い、ダム堤体(高さ21・1b、延長94・9b)に治水機能を付加するための洪水吐の形状をトンネル方式から、ダム本体の上流側に堰を設ける制御堰方式≠ノ変更した。このほか、ダム下流の河川(大井手川)の工事も河床掘削から分水路構造に変更した。事業費の増加(貯水池掘削約25億円増、ダム本体約18億円増、下流河川工事約17億円増、計画変更に伴う調査・設計約10億円増)と工期の延長は、これらの変更を受けたもの。
本年度は3億4000万円の事業費で、ダム本体の修正設計や貯水池の掘削計画の検討を引き続き進めるとともに、大井手川の分水路(ダム下流施設)に関係する地質調査や実施設計を第3四半期に指名競争入札で発注予定だ。
大井手川のダム下流部は、延長約260bで浦上川に接続する。当初は河床掘削で断面を確保する計画だったが、河川直下にJR長崎本線トンネルが通過しているほか、長崎バイパスの高架橋・側道が河川上部を横断していることから、掘削・拡幅ができない。このため、浦上川への取付を、本川と暗渠による分水路の2系統で行う事にした。暗渠の口径など詳細は設計の中で詰めていく。
17年度以降の事業費183億7000万円 今後の事業の流れを見ると、来年度まで各種調査・設計を進めた上で、18年度から浦上ダムの下流に隣接する長崎市の浦上浄水場の一部移転に向けた補償交渉に着手。19年度から貯水池上流側の仮締切を進め、翌年度から貯水池の掘削と、下流河川の工事に着手する。ダムの本体工事は下流側の掘削開始に合わせて22年度から実施し、試験湛水も含めた事業の完了は25年度末を計画している。県では、これらの事業費(17年度〜25年度)として183億7000万円を予定している。