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鹿児島建設新聞
2016/06/29

【鹿児島】ジレンマ〜建設業界の憂鬱〜 離島の担い手確保

  建設業界をあげて取り組んでいる「担い手確保」。社会基盤整備の一翼を担う業界でありながら、担い手確保・育成に苦慮している。特に本県は離島を多く抱え、本土以上に離島における担い手確保に苦しんており、その対策は「待ったなし」の喫緊の課題となっている。 
 「担い手」とは、建設の現場で働く技術者、技能労働者、現場作業員のことであり、若い担い手は次世代の建設業界の浮沈の鍵を握っているといって過言ではない。 
 本県の建設産業は、国や地方自治体の行政改革による建設投資の減少等により競争が激化し、地域社会を支えてきた建設企業が疲弊。就労環境の悪化等により「担い手」となる若年入職者が減少するなど、かつてない厳しい状況に直面している。 
 さらに大学もなく、工業系高校が少ない離島において、俗に言う「島立ち」と言われる人口流出は著しいものがある。離島の建設業者からは「死活問題だ」との声が上がるなど、若者の担い手不足に打つ手のない状況にある。 
 今回、本紙では県建設業協会と共同で、奄美市および大島郡の主要6工種(土木、建築、舗装、電気、管、造園)の大臣許可業者、県知事許可業者にアンケートを実施。 
 回答のあった企業47社が採用した新卒者は2014年度2人、15年度4人、16年度1人と低調で推移したことが分かった。一方、中途採用は14年度52人、15年度70人で、16年度も既に11人を採用するなど、中途採用でやり繰りしている現状も垣間見ることができた。 
 創業50年を越す老舗土木会社は「社員の高齢化が著しく、若年入職者が来てくれないと将来はない」と吐露。また、大手土木会社も「地元の雇用を担っている。つぶれる訳にはいかない」と語気を強めるも、「現状は相当厳しい」と嘆く。 
 そのような中、建設業界、行政、教育機関などの産学官で組織する県建設産業担い手確保・育成ネットワーク協議会(会長・川畑俊彦県建設業協会長)=表参照=では、これまで3回の会合を実施。16年度は奄美市で7月11日から16日まで、建設産業新規入職者教育訓練(新入社員研修と玉掛け技能講習)を行うことを決めた。 
 川畑会長は「離島では新人研修の難しさや離職率の高さなど課題がある。一人でも多くの若者が地元企業に定着できるようにサポートしたい」と話す。また、会合では「相当の覚悟が必要」との認識のもと、産学官が連携して短期または中長期的に取り組むことも確認した。 
 「離職率が高く、労働時間が長く、年収が低い」という建設業界。最初の段階で「ものづくりの素晴らしさ」や「建設業の魅力」の本質を認知してもらうのはもちろんのこと、建設業のマイナスな部分も知って理解してもらうことも、離職率を下げる大事な要素である。 
 
 県建設産業担い手確保・育成ネットワーク協議会 
【建設業界】県建設業協会 県建築協会 鹿児島建築工友会 県技能士会連合会 県鉄筋業組合 県鳶土工業連合会 
【行政機関・外郭団体含む】鹿児島労働局 鹿児島国道事務所 県土木部 県商工労働水産部 県教育庁 鹿児島職業能力開発促進センター 県建設技術センター 
【教育機関】鹿児島大学 第一工業大学 県立短期大学 鹿児島工業高等専門学校 鹿児島工業高校