福島建設工業新聞社
2016/06/28
【福島】県風力発電構想/共同送電線の検討開始
阿武隈地域での風力発電導入を検討している県は、阿武隈山地と新福島変電所を結ぶ共同送電線について、今夏にも国と検討組織を立ち上げ、具体的な検討を開始する。風力以外の再生可能エネルギー発電設備の連系も可能な送電線とする方向で、電力会社や選定中の風力発電仮事業者らを含めた関係者が事業主体や運営形態などを協議する
27日に福島市の福島テルサで開かれた第2回県風力発電構想検討委員会(委員長=牛山泉足利工業大学理事長)で県が明らかにした。
復興の主要施策に再生可能エネルギーの推進を位置付けている県は、接続可能な変電所が複数存在し、事業化が可能な風況が見込める@阿武隈地域(葛尾、浪江、大熊、田村、川内、いわきなど11市町村)A浜通り沿岸部(南相馬、浪江、双葉、大熊、富岡、楢葉、広野の7市町)を対象として風力発電構想の策定を進めている。風力発電開発に行政と事業者が連携し計画的に取り組むことで、適切な環境対策や地域貢献策が反映された優良な再エネ開発の実現を目指すもので、今年度内に構想を策定する。
阿武隈は最大で70万`h(3500`h×200基)、沿岸部は最大52万5000`h(同×150基)を想定。エリア内で適地を選定して風力発電を設置するため、実際の規模はこれより縮小される見込み。27年度に県が中心となり環境アセスメント(配慮書)を行った。31年度の建設工事着手、32年度内の運転開始が目標。
共同送電線の敷設は、国の福島新エネ社会構想骨子案で阿武隈山地での整備検討を国、県、電力会社、発電事業者等で行うよう明記している。阿武隈山地は再生可能エネルギーの賦存量が豊富とされているが、送電線が未整備で計画を断念する事業者も多く、県が整備を要望していた。
県は風力だけでなく、バイオマスや太陽光、小水力などの連系も可能な送電線とする考えで、新福島変電所までの最適なルート、事業主体、管理等の運営形態などを検討する。敷設は景観への配慮や用地収用の時間的ロスを避け、道路埋設を基本として架空は部分的とする考え。
阿武隈地域では、風力発電の実施を希望する仮事業者の選定手続きに入っており、仮設事業者も共同送電線の検討メンバーに加え、効率的で実現性の高い共同送電線等の計画案を立て福島新エネ社会構想に反映させる。
仮事業者の募集には3社から4提案を受けており、7月にも選定結果が公表となる見通し。実際に発電を行う事業者は、本事業者として再度公募手続きを行い今年度内に選定する予定。本事業者が仮事業者と異なった場合は、環境アセスメント調査等費用の80%を補償してもらう。
沿岸部は、風況調査のデータが一定程度整い次第、事業者の公募手続きを行う。
第2回検討委員会では委員から風力発電と送電線の厳しい整備スケジュールを懸念する声はあったものの、「再生可能エネルギー全般となると全国でも珍しい」「福島の特徴が出せる」など、共同送電線の敷設に期待する意見が多く出た。