金沢港では、港湾利用者の福利厚生施設である金沢みなと会館(金沢市無量寺町り部80)の老朽化対応や、埋立が8割程度完了した金石・大野埋立地の活用方法といった将来的な課題がある。
金沢みなと会館は、72(昭和47)年に建築されたS造2階建て延べ約2000平方メートル。100人収容可能な会議室や宿泊室7室、レストランを備え、研修、パーティなどに利用でき、そのまま泊まることも可能だ。
ただ、県議会ではかねて、老朽化に加え、県の海の玄関口を担う施設としては余りにも貧弱と、改善を求める意見が地元選出の県議会議員を中心に相次いでいる。
加えて、金沢商工会議所内の金沢駅西開発協議会がこのほど作成した「金沢駅西創生ビジョン」では、同会館の再整備にあたって石川の子供の創造性を高める施設(子供科学館など)、金沢版フィッシャーマンズ・ワーフ(海の「道の駅」)、CIQ機能強化、会議室、港湾事務所―などを具体的に提案するなど、着々と機運が高まっている。
県側は金沢みなと会館について、これまでの議会答弁において「金沢港全体の利用状況、将来の物流動向なども十分に見極めながら適切に対応したい」(15年6月議会、常田功二土木部長)との表現にとどめるものの、平成30年代前半の無量寺岸壁増深工事完成に伴い、大型クルーズ船接岸が可能となれば、その現実味が一段と高まりそうだ。
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金沢港多目的国際ターミナル(大水深岸壁)の航路・泊地工事で発生する浚渫土砂の受け入れ先となっている金石・大野埋立地。
埋立は1期、2期に分けて行われており、1期52・3ヘクタールと2期30ヘクタールを合わせた面積は82・3ヘクタールとなり、東京ドーム17・5個分に相当する。
県では先行する1期工事のうち埋立が完了した一部区域約6ヘクタールを09年7月以降、暫定的に緑地、簡易グラウンド、簡易野球場、駐車場、園路などとして開放していた。12年には1期52・3ヘクタールの埋立がすべて竣工し、町名が「金石海原(かないわうなばら)」と名付けられた。
埋立地の活用法はまだ決まっていないが、09年2月に金沢市の金沢港周辺地域まちづくり検討会が同埋立地利用の方向性として、「自然と社会の共生機能」が最も望ましいとの構想をとりまとめた。また、マイナス13メートルの航路を活かして埋立地2期区間側における岸壁整備構想も打ち出された経緯もある。
ただ、いずれにしても同埋立地を有効活用するためには、アクセス道路の整備が不可欠。現在、埋立地に面して臨海道路・金石大野線があるが、十分な機能を果たしているとは言えず、金沢外環状道路海側幹線とのアクセス強化が求められることになりそうだ。
金沢市において新たに誕生する80ヘクタール余りの空き地の将来像。谷本正憲知事がどう思い描くのか、その動きが注目される。
(おわり)