建設新聞社
2016/06/17
【東北】若手育成の重要性で認識が一致/東北公共建築設計懇談会/東北整備局など
東北の公共建築設計関係者で構成する東北公共建築設計懇談会が16日、仙台市の宮城県建設産業会館で開かれた。この中で、若手育成に関して設計団体側から若手コンペの実施や、プロポーザル参加へのハードルを下げることなどを要望。官庁側も「若手の育成は重要」とし、若手コンペの導入に前向きな回答が寄せられるなど、官民の認識が一致した。
この懇談会は、質の高い公共建築の設計委託に関して、受発注者相互が意見交換をすることで、より良い公共建築が創出できる環境を構築しようと、毎年開催している。
参加メンバーは東北地方整備局営繕部、東北6県・仙台市の営繕担当者、日本建築士会連合会、日本建築士事務所協会、日本建築家協会(JIA)東北支部・各地域会など。
開会に当たり、東北地方整備局営繕部の西澤一憲部長は「当懇談会はことしで12回目を迎える。設計委託に関しては、社会的な背景も踏まえてさまざまな制度設計がなされてきた。公共工事に占める建築の割合は1割だが、民間建築の先導的な役割を果たしている。この懇談会で問題点や認識を新たにしていきたい」とあいさつ。また、鈴木弘二JIA東北支部長が「復興事業の進捗で震災前の業務量になりつつあり今後、受注競争の激化が懸念される。さらに、設計者選定や第三者監理、人材育成、あるいは人口減少に伴うまちづくりなど課題も多い。われわれ設計団体は、行政と共に改善させていかなければならない」と述べた。
会では@これからのまちづくりA設計者選定B人材育成と持続可能な建築のための設計者選定C官庁発注の営繕工事における設計工事監理D第三者監理の見直しE設計変更が生じた場合の変更設計にかかる費用負担Fその他―という七つのテーマについて、意見交換が行われた。
このうち、設計者選定についてJIAから、入札によらないコンペやプロポーザルなど多様な方式による選定手法の導入や、設計・施工分離型の発注を要望。
一方、官庁側からは公募型プロポを積極的に導入しているほか、設計・施工は基本的に分離して発注しているとの回答が多く出た。ただ、コンペやデザインビルドについては、ほとんど実施されていない実態にあることも明かされた。
また、「人口減少に伴い若者の人材流出も問題化しており、今後の維持管理も含めた場合、地域に根付いた若い人材の育成が急務。そのためにも、若手コンペといった若い人が参加しやすい設計者選定システムの導入などをお願いしたい」(JIA)とし、実際に広島県で行われている「ひろしま建築学生チャレンジコンペ」の事例を説明。東北においても同様のコンペ導入を要望した。
これに対し、「人材流出対策としても、今挙げられた若手コンペは有効な手段だと思う。今後検討していきたい」(青森県)、「若手の人事育成は必要だ。若手コンペは大変有効ではないか。福島県では、今のところ大規模な物件に関してはプロポを導入している。若手設計者も積極的に参加してほしい」(福島県)など、肯定的に捉える回答が出た。
また、設計団体側から「プロポへの参加に当たっては、どうしても実績が必要で、若手にとってはハードルが高い。ハードルをもう少し下げて、誰もが参加しやすいものにしてほしい」「大学で教えているが、多くの学生が建築設計業界に魅力を感じていないと感じる。若手を育てないと意味がない。門戸を開いた行動をお願いしたい」などの意見が出された。
このほか、宮城県からはこれまで復旧・復興を優先してきたため、設計者選定については総合評価方式を主体としてきたが、今後はプロポーザルの導入も検討していきたいとの回答があった。
提供:建設新聞社