知立建設事務所管内には、自動車関連を中心としたモノづくり産業が集積している。物流を担う幹線道路ネットワークの整備による「成長力」の強化は不可欠だ。4月に赴任した野々山弘紀所長に2016年度の重点施策を聞いた。
――16年度の予算規模は。
「当初予算は、国庫補助が約85億、県単独費が約27億の計約112億円となる。執行に当たっては、経済の好循環を確かなものとし、その成果を広く早く行き渡らせていくため、円滑かつ着実な執行に努めるとともに節減合理化等の効率化を図っていきたい」
――管内事業の整備方針は。
「15年10月に策定された『〜社会資本整備の基本方針〜愛知県建設部方針2020』に基づき、『防御力』『保全力』『成長力』『魅力』の4つのテーマに基づき事業を展開していく」
「中でも、この地域には、自動車関連を中心とした『モノづくり産業』が集積しており、産業経済活動に伴う人・モノの移動により各所で渋滞が発生している。『モノづくり産業』のさらなる成長のためには、交通の流れを円滑にし、物流を効率化することが不可欠。物流を担う幹線道路ネットワークの整備などにより『成長力』を強化していく」
「また、近年頻発する集中豪雨や、東日本大震災、さらには熊本地震を受けて、防災減災対策は喫緊の課題。境川・猿渡川流域では、都市化の進展に対応した総合治水対策、鹿乗川では08年8月末豪雨の緊急対策が14年度に一定区間完了したことに伴い、その上流部の洪水対策、高浜川水系や蜆川流域の低地については洪水・高潮対策などに取り組む。南海トラフを地震域とする巨大地震に備えるためにも、14年12月に策定された第3次あいち地震対策アクションプランに基づき緊急輸送道路の耐震化や河川・海岸堤防の耐震化を着実に進め、これらによりこの地域の『防御力』を高めていきたい」
――当面の大型事業について。
「名鉄知立駅付近の名鉄名古屋本線、三河線の連続立体交差事業(総事業費約610億円)や国道419号の衣浦大橋東交差点の南北直進方向の立体交差化事業(総事業費約56億円)の推進、広域ネットワークを形成する主要地方道名古屋岡崎線や西三河地方で初めての県営公園となる油ケ淵水辺公園の整備、蜆川における排水機場新設などがある」
――連続立体交差事業については。
「名鉄知立駅を中心に延長4・3`の鉄道を高架化する。完成すれば、現在ある10カ所の踏切がなくなり、道路交通が円滑になるとともに踏切事故の心配もなくなる。また、土地区画整理事業や街路事業などの関連事業との一体整備で、まちの総合的な整備が図られる。現在、名鉄名古屋本線の仮線工事を行っており、16年度は知立駅仮6番線および名古屋本線豊橋行きの仮線切り替えに向け、工事を推進する」
――道路事業は。
「南北の主要幹線道路の国道419号について、主要渋滞ポイントである衣浦大橋周辺の渋滞対策として、衣浦大橋東交差点ほか2カ所の交差点を南北方向に直進立体化する。16年度は、残りの橋梁床版工(4径間連続RC床版)と南側の取り付け擁壁および取り付け道路を発注する。また、15年度から衣浦大橋拡幅事業に着手、16年度は橋脚工を発注する予定だ。刈谷市内の4車線化については、15年度末までに完了しており、引き続き高浜市内の4車線化工事を実施する」
「主要地方道名古屋岡崎線については、豊田市境から岡崎市境までの延長約2・8`区間のバイパス整備を行っており、15年度末までに約1100b区間を供用した。16年度は、安城市里町地内などで残りの1・7`区間の工事進捗を図る」
――河川整備について。
「境川・猿渡川流域について、境川・逢妻川では、刈谷大府線の旧橋を撤去し、当面の改修目標に対する整備がおおむね完了した。今後は、改修規模の向上を図るため、下流部からの河道掘削工事を進める。猿渡川では、中流部の河道掘削工事、河口部で左岸堤防の耐震化を進め、16年度に完了する予定だ。鹿乗川では、15年度に引き続き、護岸整備を進める。蜆川では、13年度から蜆川排水機場の建設工事に着手、16年度は引き続き水路工・除塵設備を整備する予定だ。高浜海岸では15年度に続き、海岸堤防の堤防老朽化対策工事を進める」
――油ケ淵については。
「公園と河川環境の2事業で整備を進めている。公園では、油ケ淵水辺公園を06年度から事業着手している。住民参加による公園づくりを目指し、ワークショップを開催しながら計画をまとめ、12年度から本格的に公園造成工事に着手した。16年度も引き続き建築工事などの整備促進を図る。河川環境整備では、11年度に見直した『清流ルネッサンスU計画』に基づき、16年度も引き続き工事を進め、油ケ淵の水質改善を図る」
――下水道事業については。
「閉鎖性水域である三河湾の環境改善に資するため、富栄養化の原因となる窒素・りんの除去対策として、境川浄化センターの1系水処理施設の高度処理化工事を引き続き進める。また、境川浄化センターは供用開始後27年、衣浦東部浄化センターは20年が経過しており、老朽化している設備の機能維持とライフサイクルコストの最小化を目的に長寿命化計画を策定し、計画的に改築、更新工事を行う」
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建通新聞社