愛知県西三河農林水産事務所は、新たに策定した「食と緑の基本計画2015西三河地域推進プラン」を基に各施策を展開している。16年度は農地再整備や農業水利施設更新整備をはじめ、ため池耐震対策、治山施設整備、森林整備などに重点的に取り組んでいく。地域の特性を生かすべく各事業を推進する森本真治所長に、16年度の重点事業や今後の課題などを聞いた。
―事業の基本方針は。
「県民の安全で安心できる豊かな暮らしを実現するため、『食と緑の基本計画2020西三河地域推進プラン』に沿って各種施策を推進していく。具体的な施策として、『安全で良質な食料等の安定的な供給』を確保するため、農地の再整備や農業水利施設の更新整備を進める。また、『自然災害に強く緑と水に恵まれた生活環境』を実現するため、ため池の耐震対策や農業用排水機場の整備、治山施設の整備および間伐による森林整備などに重点的に取り組んでいく」
―16年度の予算規模は。
「事業総額は55億5000万円で対前年度比122%。このうち、建設課は20億1000万円で対前年度比120%、幡豆建設課は30億1000万円で対前年度比123%、林務課は5億3000万円で対前年度比123%となる」
―16年度の主要事業は。
「建設課ではかんがい排水事業2地区、水環境整備事業1地区、経営体育成基盤整備事業6地区、たん水防除事業3地区、小水力発電施設整備事業・特定農業用管水路等特別対策事業・海岸整備事業各1地区、防災ダム事業2地区などの県営事業を予定。幡豆建設課では、経営体育成基盤整備事業3地区、農業水利施設保全対策事業10地区、たん水防除事業7地区、海岸整備事業5地区、防災ダム事業6地区、水質保全対策事業3地区、小水力等発電施設整備事業1地区などの県営事業を実施する」
「このうち、新規地区は県営事業で経営体育成基盤整備事業の今川今岡地区をはじめ、たん水防除事業の前新田2期地区など3地区、特定農業用管水路等特別対策事業の小針地区、土地改良施設耐震対策事業の西三河5期地区、農村総合対策事業の矢作中部地区、小水力等発電施設整備事業の西尾地区を予定。農業水利施設保全対策事業では治明地区など2地区、防災ダム事業では南溜池地区、水質保全対策事業では高落3期地区、土地改良施設耐震対策事業では幡豆5期地区で実施する」
「林務課では林業の振興と森林の保全を図っていく。山地災害を防止するための治山事業、間伐など森林整備のためのあいち森と緑づくり事業などを実施する。あいち森と緑づくり事業では人工林整備事業118f、身近な里山林整備事業(交付金)5カ所、里山林再生整備事業3カ所。治山事業では土木工事17カ所、森林整備3カ所を見込む。林道事業では補助事業3路線を予定している」
―重点事業は。
「建設課はかんがい排水事業に4億円、経営体育成基盤整備事業に3億3000万円、農地防災事業に6億6000万円を見込み積極的に推進する。また、14年度から着工した国営総合農地防災事業矢作川総合第2期地区と連携、今年度も明治用水県営級支線の耐震点検調査を行う。13年度に着手した小水力発電施設整備事業羽布ダム地区は、3億3000万円の予算を確保し、今年10月の稼働を目指す」
「幡豆建設課は大規模地震や津波の発生が懸念されるなど、これまで以上に自然災害への対策が必要となっている。特に、幡豆農地整備出張所管内はゼロメートル地帯を抱えた低平地で、地元から強く防災対策が望まれていることから、たん水防除事業をはじめとした農地防災事業に16億4000万円を盛り込んだ。16年度も引き続き国土強靱(きょうじん)化の観点から排水機場や海岸整備など防災・減災対策を実施していく。また、再生可能エネルギーの生産および促進の観点から、農業水利施設を利用した小水力発電施設の整備を実施する」
「林務課は地球温暖化防止、水源のかん養や土砂災害防止などの森林が持つ多様な公益的機能をより一層向上させるため、治山事業による荒廃渓流の安定を図るとともに、保安林機能を高める本数調整伐やあいち森と緑づくり事業により人工林、里山林の整備を引き続き実施する」
―今後の課題は。
「担い手農家のさらなる育成・支援のため、ほ場の大区画化を目的とした再ほ場整備、末端用水路のパイプライン化を図る土地改良事業、地球温暖化防止など森林の持つ公益的機能向上のためのあいち森と緑づくり事業など各種事業による森林整備、暮らしの安全・安心確保対策として農地防災事業、治山事業、豊かな農山村を目指すための環境整備事業などを一層推進していく必要がある。また、地震防災・減災対策として、従来から進めているため池の耐震対策やハザードマップの作成、海岸堤防の液状化対策に加え、明治用水の耐震点検調査などさまざまな施策を展開し、安全・安心な地域づくりを進める必要があると考える」
―業界に対する要望は。
「建設現場における作業員の安全と健康を確保するための作業環境の整備を行うとともに、作業員の安全意識の向上に努め、労働災害の発生防止に万全を期していただきたい。昨年度は、鳥インフルエンザや口蹄(こうてい)疫の発生はなかったが、発生した場合は国の指針で早期に防疫を完了することが求められている。業界団体の迅速な防疫活動への協力をお願いしたい」
提供:
建通新聞社