北海道建設新聞社
2016/05/31
【北海道】カーボンニュートラル賞に北見信金紋別支店−冷房時電力4割削減
建築設備技術者協会の第4回カーボンニュートラル賞に北海道支部から「北見信用金庫紋別支店における低炭素化の取り組みと実証評価」が選ばれた。地中熱利用や放射冷暖房などの採用によって環境性と快適性を両立。竣工後、省エネチューニングによって冷房時の消費電力を約44%削減した取り組みなどが評価された。
このほど札幌市内で開かれた同支部の総会後、取り組みに関わった技術士として北海道日建設計の山中哲氏、佐々木義典氏、畑中壮大氏のほか、検証・評価を担当した北大大学院工学研究院の菊田弘輝氏と小笠原大晴氏が表彰された。
2014年4月に竣工した同支店は同信金における西オホーツク地域の拠点。構造はW造とRC造で、2階、延べ1141m²の規模。建て替えに伴い、低炭素化計画を立て、地場産木材を活用することで、建設・解体時のCOb削減や地場産業の活性化にも寄与している。
地中熱源はボアホール、ヒートポンプチラー、ビル用マルチエアコンなどを導入。ATM関連の空調を除き、建物全体の冷暖房を地中熱で賄った。ボアホールは深さ100mにダブルUチューブを21本配置し、ループ状に配管した。試験時の地盤温度が11・8度だったため、待合室系統は基本的に熱源機器を介さずに、ボアホールから直接冷水を供給するフリークーリング(FC)で冷暖房負荷を処理する。冷熱不足時や暖房時にヒートポンプチラーを運転させる。
室内環境では、天井高10m超の待合室を、放射パネルと床冷暖房を併用した放射冷暖房とし、快適性も確保した。放射冷暖房で均質な温熱環境を形成。放射パネルで冷房時は高い位置から下降気流を得、開口部からのコールドドラフトを抑えた。
冷房時は冷気が床付近に滞留し、上へ向かうにつれて温度が高くなる。暖房時には居住域の上下温度分布をほぼ一定化し、上下の温度差を2度以内に収めた。自然換気も取り入れ、吹き抜け部の熱だまりを改善した。
夏季(14年8月)はFCの稼働率が約50%で、エネルギー消費効率の平均システムCOPはFCが3・2、ヒートポンプチラーが3・7だった。冷涼な気候のため冷房時の低負荷での運転時間が長く、FCでのシステムCOPが低かった。これらの結果を踏まえ、15年8月にチューニングでの省エネを推進。冷房の運転条件を修正し、ほぼFCで冷房を処理して低負荷運転時間を減少させた。
結果、平均システムCOPはFCで4・5、ヒーポンプチラーで4・7に向上した。待合室系統の消費電力量は約44%削減。1次消費エネルギー消費量は、類似用途施設の参照値と比べて約41%削減している。