福井県建築士事務所協会は先月28日から2日まで、熊本地震被災地で応急危険度判定士として建物等調査を実施した。日本建築士事務所協会連合会および県からの要請に応え、同協会からは6人、建築士会福井支部からは4人が派遣された。
派遣員の一人で、同連合会の元構造専門委員でもあった、事務所協会会長櫻川幸夫氏に現地の様子を伺った。
応急危険度判定士は、阪神大震災を機に設けられた登録制度。行政や民間の建築士で、ボランティア活動が可能な者が対象。被災自治体からの要請を受け、3日間活動する。
2次的災害防止に向け「被災建築物応急危険度判定マニュアル」の元、柱の傾きや外壁のクラック、構造体の破損、屋根瓦や給水器などの落下などを判定、「危険(赤色)」「要注意(黄色)」の紙を貼る作業を行った。
櫻川氏は「当初は連休中の派遣を想定していたが、連休後半には被災者を適切な避難所に移動させたいという現地の意向があった。居住の可否について早急な判定が必要という事で、予定を前倒しし、調整を行う必要があったとの事」と語る。
現地では市担当者から、被害状況や担当区域などについて説明を受けた。「厳しい状況の中にありながら、力を込めた切なる言葉や心遣いを頂き、おのずと気合が入った」。
作業中も、住民側から『自分の家は大丈夫なのだろうか』と声を掛けられることがあったそうで「そのような不安に対し、的確にアドバイスを行うことで、メンタルのケアをお手伝いする、そういった役割もあった」と責任の重さを実感した。
担当した住宅は14日の地震には耐えたが、16日の震度7で筋かいが折れ、コーナー壁が飛び出した。「短期間での連続した強震を想定した基準や対策が、今後必要になるのではないか」と提言する。
公共の建物については「ある体育館は屋根の筋かいが折れてしまったが、その他は耐震工事がほぼ完了、避難所の機能を果たしていた。20年前の阪神大震災、その後の新潟中越地震や、東日本大震災などにおける教訓が生きていたのでは」と現地の状況を振り返る。
「復興に向けて、関係機関のたゆまぬ努力が必要。建築士として学ぶことは多い。出来る事は全力でしていきたい」と力を込める。
県内の応急危険度判定士は1100人あまり。県も新規登録を求めている。「今回の調査は若い世代の教育も兼ねていた。マニュアルだけでなく、現地で自ら体験し、何が大切なのかを感じてもらえたと思う」と語った。