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大分建設新聞社
2016/05/14

【大分】古民家の耐震化へ、全国古民家再生協会大分支部山香町で無償診断

 一般社団法人全国古民家再生協会(東京都、園田正文理事長)の大分支部(中川未来支部長)は11日、杵築市山香町立石の古民家で耐震診断士による「動的耐震診断」をボランティアで実施した。
 参加した診断士は、同協会の有志4人。協会では、熊本地震の発生後、緊急支援として、@全国各地の古民家耐震診断・耐震補強を無償で実施A九州地区の空き古民家を活用し、被災者に無償貸与する―などの活動をしている。
 今回は、診断依頼があった、築200年の古民家を診断。建物の屋根裏と地面(土間部分)に地震計を設置し、それぞれの「固有周期」と「共振性能係数」という揺れ方の速度や方向、性質などの振動を計測し、数値で分析する。この分析結果をふまえ、耐震性が不安と判断した場合は建物に最適な補強方法を提案する。
 緊急支援では、建物に壁の少ない伝統構法の古民家の耐震補強対策の一つとして、「古民家耐震パネル型面格子壁」の設置を無償で支援する。この格子壁は、伝統構法の免震的構造に合わせた強度と柔らかさを持つ間伐材を使用した壁部材。揺れ戻す力を補佐する耐震機能と、形状が格子のため通常の壁に比べ、通風や採光に優れている。
 杉本龍一東京第一支部長(鞄o美代商事執行役員・伝統構法耐震評価機構主任講師)は「地震発生以降、木造住宅が地震に弱いという印象が広まっているが、長年の災害を乗り越えた古民家が現存している。古民家は地震に「耐える」構造ではなく、柔らかさを持って揺れを吸収する「いなす」構造で、先人の知恵と技術が集結したもの。木造だから弱いという間違った認識を払しょくし、歴史ある古民家と共に長く安心・安全に生活できるよう活動を続けたい」と話した。
 今回の診断結果では、全体的に大きな問題はなかったが、外壁に一部クラックが確認された。また、不安な場合は、動的耐震診断の分析結果からみて、東西方向に補強を入れるとしている。詳しい結果は後日、依頼主に通知される。今回は県内から23件の応募があり、うち2件を選別した。もう1件の別府市の古民家でも12日、診断が行われた。      

 パネル型面格子壁
 構造用合板などのマイナス点を改善した、耐震補強資材。従来の構造用合板は、建物の美観を損ない、湿気による壁内部の機能低下が指摘されるが、面格子壁は見た目の美しさを保ち、格子材の太さ、間隔・角度を伝統木造建築物に適合できるため、規格が統一してない古民家でも対応して耐震補強できる。

提供:大分建設新聞社