リードケミカル(富山市日俣、森政雄代表取締役社長)の「森記念秋水美術館」が富山市内に完成した。「静謐と豪奢―日本刀をめぐる美の世界―」をコンセプトに掲げ、6月11日のオープンに向け展示準備が進められている。
秋水は、曇りのない研ぎ澄まされた日本刀を意味する言葉。同社が収集してきた重要文化財、重要美術品を含む全国有数の日本刀コレクション約200点をはじめ、横山大観や川合玉堂ら日本の近代美術史を代表する画家の作品、日本・中国の陶芸や書など多彩な美術品を公開する。
規模はRC造4階建て延べ約2100平方メートル。同市千石町1丁目、国道41号山王町交差点の一角に建設された。1階は富山ゆかりの作家による絵画や彫刻作品のギャラリー、ショップ、カフェ、研修室を配置。ショップでは伝統工芸によるオリジナルグッズを販売する。2階には日本刀や甲冑などを並べ、黒と白の対比による凛とした雰囲気を醸し出している。3階は和みや安らぎを表し、近代日本画や陶芸作品などの鑑賞室となる。外観は、壁面にグレー色のアルミ外壁材を張り、鎧兜をイメージした重厚感のあるデザインに仕上げた。
開館記念特別展は、2階鑑賞室のテーマが所蔵名品刀展「秋水の美」。重要文化財である正宗の脇差(鎌倉時代末期)、虎鉄の刀(江戸時代)をはじめ、富山県が刀剣の一大産地であったことから、越中刀工のコレクションも含め約30点を展示。3階鑑賞室は「細川護煕の美と永青文庫の至宝」。細川家伝来の美術品や歴史資料を収蔵し、研究・展示を行う永青文庫(東京)の作品のほか、理事長を務める18代当主の細川元首相による陶芸作品、絵画を飾る。
一般公開は6月11日の午後1時30分から。年4回ほど作品を入れ替え、展示する予定。
同美術館では、貴重な美術品を後世に伝えるとともに、現代的、国際的な視点から日本の美意識と精神性を捉えなおし、広く発信したいとしている。富山市の中心市街地に位置することから、まちの活性化、賑わい創出にもつなげていく。
施工は建築が日本海建興、電気設備が北陸電気工事、機械設備が三機工業。設計は三四五建築研究所が担当した。