富山県建設業協会労務経営委員会(委員長・辻正博辻建設代表取締役副社長)は、2015(平成27)年度「建設業の雇用実態と経営状況に関するアンケート調査報告書」をまとめた。
建設業界の雇用改善や若手技術者・技能者の入職・定着を促す方策を検討するための基礎資料とすることを目的に、建設業の雇用実態や経営状況を調査したもの。
アンケート調査は、建設経営サービスに委託し実施。全会員企業の568社を対象として、15年9月3日から11月18日に調査し、402社から回答を得た。回答率は70・8%。
項目ごとの調査結果を見ると、まず、従業員の雇用状況では、就業者の職種別割合が技術職51・9%、次いで現場の実作業を担う技能職が20・6%と、合計で72・5%が現場関係の業務に従事している。
技術職・技能職の年齢構成は、10代と20代の割合が若干増えたものの、全体的に高止まり傾向で、50歳以上は43・9%を占めた。60歳代の退職が今後進む中、新たな担い手を確保・育成することが急務としている。
また、仕事のやりがいや魅力を広く発信し、建設系学科以外の学生や他産業からの転職者などを確保することに併せ、新たな担い手として、女性技術者の採用も積極的に取り組んでいく必要があるとした。
入社から1年以内の早い時期で退職する若者が多く、入職促進と併せて、賃金や休暇といった雇用環境の改善、社内の教育体制の充実等を進めるなど、定着率を高める取り組みも進めなければ、今後の必要な人材の確保にはつながらないとしている。
給与・賞与等では、従業員の給与が半数以上の企業で上昇。夏季賞与を支給した企業の割合も増え、金額も概ね前年度の水準を維持した。夏季賞与が上昇した企業は41・8%で、「利益の確保が見込めるため」、「工事量の増加による従業員の働きに報いるため」との意見が多かった。
しかし、15年度に入ってからの工事発注量の落ち込みが激しく、今後もこの状況が続くようであれば、従業員の給与・賞与に悪影響を及ぼす懸念があるとしている。
経営状況に関しては、回答企業の70・1%で土木工事が中心と答えた。土木工事の完成工事高のうち、公共事業が占める割合は非常に高く、元請け・下請けを合わせて78・3%を占めた。
直前決算における営業利益率では、黒字企業が大半を占め、前期比の営業利益率では増加42・2%、減少35・8%と増加が上回った。
営業利益率が減少した理由には、「年間完成工事高が減少した」、「利益率が確保できない工事が増えた」を挙げる企業が多かった。
若手世代の教育では、現場での実践を中心とするOJTや自主的な学習を挙げる企業が多かった。育成の課題では、一人前になるまでの時間がかかることや育成方法そのものを挙げる企業の割合が高かった。具体的な意見として、「資格取得に必要な経験年数が長い」、「試験の合格率が低い」、「資格取得に係る費用が高い」といった問題等が寄せられた。
労働状況・休暇制度では、週休体制を4週6休(全日曜・土曜2回)とする企業が圧倒的に多く、週休2日制(完全土日休暇)を採用する企業はわずかだった。
完全週休2日を実現するための意見として、「余裕を持った工期の設定」、「現場経費や人件費を考慮した工事価格の設定」、「発注の平準化」などがあった。
女性の活用については、現在会員企業に従事している女性技術者の資格は、取得予定者も含めると、土木系52・3%、建築系43・6%で、やや土木系の比率が高い。
女性技術者を「活用したいと思わない」と答えた企業は38・6%。その理由から、女性技術者の活用を促進するための施策(トイレなど現場環境の改善、福利厚生の充実を図る企業への補助)を拡充し、各企業での取り組みを推進することで、広く受け入れ態勢が整っていくと考えられるとしている。
今後の経営戦略等に関しては、今後の経営を見据えた取り組みとして、「元・下請双方の受注強化」、「元請工事の受注強化」など、完工高の増加を図るための取り組みが多かった。
経営基盤の強化を図る取り組みでは、「技術者の確保・育成」を挙げる企業が60・4%で、そのために活用したい施策にも「若年者の雇用に関する支援・補助」、「技術者の意識向上のための研修」など人材に関するものが多い。
発注機関に望むことでは、「発注量の確保」を挙げた企業が80・8%と圧倒的に多く、何よりもまず十分な工事量の確保が欠かせないことが分かった。施工時期の平準化を望む声も依然として多かった。