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日刊建設タイムズ社
2016/04/25

【千葉】第一義に「強い発注者責任」/世界標準は「ハーネス型」

 建設業労働災害防止協会千葉県支部の正副支部長ら三役一行は21日、4月1日付で就任した福澤義行・千葉労働局長を表敬訪問した。福澤局長の前官職は、独立行政法人労働安全衛生総合研究所理事。「技術系の出身なので、いつも研究の中身に口を出しながら楽しくやっていた」と話す。「世界トップクラス」で、建設業のみの災害発生件数を比較しても「日本の3分の1程度」と言われるイギリスの安全衛生管理事情に明るく、その特徴として「発注者責任が強い」ことと「大手と中小の安全管理上の較差が小さい」ことを指摘。安全帯については「世界標準はハーネス型。海外に出ると胴ベルト型の日本は、世界標準から遅れている部分であることを強く感じる」とした。さらに、五輪関連工事での死亡災害がゼロだったロンドン五輪を引合いに、「その教訓は日本も学ぶべきだと思う。良いところはどんどん吸収して、是非とも死亡災害ゼロで東京五輪を迎えて頂きたい」とエールを送った。

  ◇建災防幹部が表敬訪問

  この日の表敬訪問には、尾頭博行支部長をはじめ内山弘通、櫻井勝治、柴田一敏、岩田丈各副支部長と神田公司専務理事、米倉三千雄次長が同行。千葉労働局では福澤局長と遠藤光・労働基準部健康安全課長が応対した。
  あいさつに引き続き行われた会談で福澤局長は、前述の労働安全衛生における日本とイギリスの違いについて「(安衛研在任時に)どこにその原因があるのかということで、研究部がイギリスに行って研究した」とし、その内容として「大手の建設現場を見ると『日本の方が良いのでは』と思えるが、何故か事故率は低い。『リスクを発生させた側に責任がある』として、一つは発注者責任であり『発注者側で最大限リスクを低減しなくてはいけない』ということが、個人の住宅の建設工事までに及んでいる」と説明。
  例えば「私が家を建てたいといった時に、その工事の労働災害の責任は『一義的にリスクの低減は私が負う』というしくみになっている。かと言っても、実際に個人でその責は負えないので、専門家が入って、設計段階から建築中に事故が起こらないよう、リスク管理をきちんと行うように求められている。お金はかかるが、小さな現場でもある程度の災害は未然に防げているとのことで、考え方の問題にある」との感想を述べた。

  ◇職種ごと定期更新資格制度に重きを

 もう一つは、建設現場で働く人たちの教育・訓練において「資格制度に重きを置いており、定期的に更新し、専門職種ごとに分かれている。専門的な教育を受けていない人を使って事故を起こした場合は、当然、それは会社側あるいは発注者側の責任になるというシステムであり、学ぶべきところは多い」とした。
  これらの話に対して内山副支部長は「そういった面からも発注者の責務を明確にすれば、設計に関しても、仮設関係をはじめ、現場に合わない無理な設計などがなくなると思う」と述べ「今でも各労働基準監督署において、発注者安全会議を開いて頂いているが、人の命は第一義であることから、それで労働災害が減るのであれば願ってもないことであり『やっとここまで来たか』との感がある。是非とも日本でも取り入れて頂きたい」と要望した。

  ◇日本の良さとして、リスクアセス推進

  一方で福澤局長は「日本は現場管理が優れている。諸外国と比較して働いている人たちの能力が高く、現場での安全施工サイクルやミーティング、危険予知訓練などをきちんと行っている。それを捨てるようなことはしないで頂きたい」と要請。「『リスクアセスメントだけをやっていればよい』という考え方ではなく、日本の良さとして、リスクアセスメントとうまく結び付けて、現場の状況が改善されれば」との考えを示した。
  ここで内山副支部長は、提案として「建設業に携わる人たちの労働災害防止のために『建設事業を行う方々は必ず建災防に加入し、安全衛生教育を徹底する』ということを、国を挙げて行って頂きたい。実際のところ(建災防への)未加入業者による事故が多い。国の強い姿勢で強く行政指導して頂ければ、事故はだいぶ減ると思う。これは非常に大事なことだと認識している」と訴えた。

  ◇重篤災害は絶対に起こさぬ強い覚悟

  これに対して、福澤局長は「是非とも建災防の加入会員と非会員との違いや、あるいは『会員になるとこういったメリットがある』ということを、数量的にデータで示したものがあれば活用させて頂きたい」と回答。さらに「我々がまずすべきことは、重篤度の高い『死亡災害や障害が残るような災害は絶対に起こさない』ということが最重点だと思う。そういった強い気持ちでいることから、是非ご協力をお願いしたい」と要請した。
  最後に、尾頭支部長が「我々も加入に向けた声掛けなど、未加入事業者に対する出来るだけの努力に加え、さらに勉強を重ねて頑張っていくので、ご指導をよろしくお願いしたい」と述べ、20分余りに及ぶ会談を終えた。k_times_comをフォローしましょう
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