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建設新聞社(長崎)
2016/04/22

【長崎】入札先進県ながさきの継承 連載B

―入札契約制度から担い手3法の実効性確保へ―
 最終回 県の現状と今後

 業界を取り巻く状況を踏まえて柔軟に入札契約制度を導入してきた県の歴史を振り返りながら、担い手3法の実効性担保のための施策の方向性をさぐる連載。最終回は、現在の県の入札契約制度を確認した上で、今後の方向性を展望した。

継承される県内建設業者育成の視点

 県では、入札・契約制度の客観性や透明性、競争性を高めるため、一般競争入札の対象を順次拡大してきた。ただ、サブプライムローン問題に端を発する経済不況の中にあった2008年末、県の『緊急経済雇用対策』を踏まえた土木部の対策として、指名競争入札の対象を大幅に拡大。設計金額3500万円以上(土木一式など)としていた一般競争の適用を1億円以上にし、指名競争入札を暫定的に拡大した。入札手続き期間の短縮による負担軽減を目指したこの措置は、現在も継続している。
 前回紹介した「地域力保全型指名競争入札」も継続。さらに本年度からは、管内Aランク業者が少ない上五島管内を対象に「地域力保全型一般競争入札」を試行。5000万円〜1億円の工事に導入し、管内Aランク単体とともに、管内に受任営業所があるAランク業者と管内Bランク業者のJVの参加を認める混合入札を実施。管内建設業の経営の安定・向上と、地域の安全安心・雇用の確保につなげる。
 本年度は、土木一式を対象にした特別簡易型総合評価落札方式に「事後評価・同時提出タイプ」を本格導入する。技術資料(自己審査表含む)と入札書の同時提出を求め、自己審査表と応札額で決まる仮の順位の上位の応札者のみを審査するもの。本格導入に当たり、これまで競争参加資格申請書の提出時に求めていた配置予定技術者の選任書類を、技術資料を提出するタイミングに変更。配置予定技術者の拘束日数の大幅な短縮(21日→7日間)を実現した。過去2年の試行や応札者へのアンケートなどを踏まえたものだ。

   他機関の動向ではなく直面する課題に対応

 配置予定技術者の拘束をここまで短くした事例が他の発注機関であるのかを県側に聞いてみた。答えは「分からない」。これは、他の機関の動向を参考にするのではなく、課題やニーズにどう対応するかに主眼を置いて制度設計を進めてきた証と言える。制度設計の重要な視点の一つとして継承されてきたのが県内建設業者の育成≠セ。
 本年度から、企業が取り組む高校・大学生に対する現場実習などの活動を幅広く評価することにしたのも、この視点と言える。特別簡易型と簡易型の総合評価方式の共通の評価項目である「社会貢献活動B」の選択肢の一つ「地域産業の担い手育成プロジェクト等の協力」の評価対象を変更。これまで、県が進める『将来の長崎県の建設産業を担う人材の育成事業』への協力のみを評価していたため、同事業以外で取り組んでいる高校生・大学生向けの建設業関現場実習が評価されていないなどの課題があった。本年度からは、高校生・大学生が参加する建設業関係の現場実習に協力したすべての企業を評価する。
 さらに、長崎大学が中心となって養成している『道守』を、橋梁上部工(鋼橋・コンクリート橋)の総合評価で加点する措置も導入。道守を含む五つの国土交通省登録技術者資格について、「配置予定技術者の能力」の評価項目中の技術者の資格B≠フ対象に追加する。県内の橋梁で履修・修了し、県特有の立地環境や劣化・損傷状況などに精通している『道守』については、「他の資格と比較してアドバンテージを与える」(建設企画課)方向で詳細を詰めている。

   県の取組 担い手3法の理念と合致

 これらの取り組みのほか、13年度から内容を修正しながら対象を拡大している『担い手育成型』の総合評価方式。さらに、10年度から総合評価方式で加点している労務賃金を設計労務単価以上支払う誓約≠竍元請や下請への登録基幹技能者の在籍=A13年度から実施している下請け次数の制限(土木―2次下請け、建築―3次下請けまで)≠ニいった取り組みは「結果的に、担い手3法の理念に合致している」(建設企画課)。
 ことし3月29日に県の入札監視員会が知事に提出した報告・意見書では、地元建設業者の育成≠初めて盛り込んだ。入札の競争性・透明性などを監視してきた委員会の意見としては異例だが、担い手3法の施行をはじめ、社会の要請が県の取り組みと合致してきたとも言える。
 監視員会の意見書提出の場に同席した土木部の田村孝義技監(当時)は、本紙の取材に対し「離島と半島で構成されている本県は、地域の安全・安心の観点からも地元建設業者の存在が不可欠」と述べ、今後も地元育成≠フ視点は変わらないことを強調した。
 既に新たな検討も始まっている。道路維持課では、膨大なストックの効果・効率的な管理策の検討の一環として、包括的契約制度を導入している栃木県を視察。北海道や東京都府中市など、他自治体での包括管理事例や、国が掲げる地域維持型JVなども参考にしつつ新たな手法の検討を進めている。
ksrogo